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カテゴリ:がちがちハードボイルド
少しだけアウトローな若者を描く三羽省吾の小説を読んだ。
○ストーリー 会社を辞めたタカシ,引きこもりのキノブーは,高校時代の悪友・レンチに強引に誘われて,北海道へ車で向かう。途中で拾ったのは,月子という無愛想な家出少女。行く先々でトラブルを起こす彼らは,ヤクザのブツを奪ってしまい,ヤクザからも追われるようになる。そんな彼らに支援の手を差し伸べたのは・・・ ------------ もう絵に描いたようなロードノベルだ。東京から出発して,仙台を経由し,北海道の各地を巡る。資金が無くなると,旅先で肉体労働をして稼ぐ。 最初はギクシャクしていた仲間が,徐々に互いの悩みや弱みを理解して,優しい空気が流れ始める。 ------------ 三羽省吾の小説らしさが強く出た作品だ。 まずはキャラクターが面白い。強烈な個性を持ちつつも,ギリギリのラインでリアリティとか,セコさを保っている。 次は,お馴染みの建築現場での肉体労働。現場の正直なチカラ関係,人物への評価が描かれ,最初のつらさを超えた毎日の輝きが語られる。 そして最後が・・・表現が難しいけれども・・・読者の予想を裏切る大人のラストシーンだ。これゆえに,よく「読後感が良くない」と評されているけど,予定調和にしたくないんだよね,きっと。 ------------ この作品の個性を規定しているのは,仙台から旅の仲間に加わる家出少女・月子の存在だろう。無口でぶっきら棒で,なぜか機械や錠前に強い。そして北海道で何かを捜している。 タカシたちの旅は,自分たちに何が足りないかを探るだけでなく,月子が誰なのか?ということを探るための旅だったと言ってもいい。 これまでのどんなヒロインとも違う月子を登場させたことからも,三羽省吾の「これまでの小説とは違うものを書く」という意気込みがうかがえる。 決してスッと受け入れられるヒロインではないけど,圧倒的な個性を持つ月子のことを読んで知ってもらいたい。 ------------ 三羽省吾ワールドでも,ちょっととっつきにくい作品かも知れないが,根底に流れる反骨精神は健在だ。 三羽省吾ファンは外せない作品だと思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013.09.22 18:36:06
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