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カテゴリ:がちがちハードボイルド
大沢在昌のライト系ハードボイルドの名作〈アルバイト・アイ〉の復刊本を読んだ。
○ストーリー 高校2年生の冴木隆は,父親と2人で六本木のマンションに住んでいる。無精者の父親・冴木涼介は,そのマンションで探偵事務所を営んでおり,隆もひんぱんに事務所の手伝いをする。彼らの元に若い恋人が誘拐されたというビジネスマンが相談に訪れる。華やかな80年代の東京で,冴木親子は危険な仕事を繰り返す。 -------------- これまで講談社で刊行されていた〈アルバイト・アイ〉のシリーズが,角川文庫で新装版が復刊されることになった。これはその1巻で,連作短編集となっている。軽めとは言え,6作品も続いたハードボイルドとして,前から興味はあったので,早速読み始めてみた。 大沢在昌なので,読み易さや文章は標準的。ただ作品の内容がバリバリの1980年代なので,今の若い人にはピンと来ない表現や言葉も多いと思う。〈ワム〉〈カルチャークラブ〉〈デュランデュラン〉といったバンド名や,多くの車種の名前も分からないだろう。また女子高の〈スケ番〉が地面まで届くようなセーラー服を着ている,というのも,もう理解されないような気がする。 最近では80年代を懐かしむ風潮もあるので,ひょっとしたら今回の復刊もそうした理由が背景にあるのかも知れない。 -------------- (バレバレだけど)暗い過去があるらしい不良中年の冴木パパ,良い不良高校生の冴木息子が,互いに悪口をいいつつもマンションで2人暮らしをしている。その1階にはマンションオーナーが経営しているレストランバーがあり,2人はそこでツケで飲食をし,時々はそこを連絡中継ポイントとして使用する。もうこれだけで,日本とは思えない設定だ。 冴木パパの昔の仕事の関係で,国際的テロリストに命を狙われたりするけど,冴木親子2人とも車の運転どころか銃の取り扱いも可能なので,うまく切り抜けてしまう。・・・いや,これホントに日本??? その辺りを広い気持ちで目をつむれば,テンポが早い,ハードボイルド風のエンターテインメントとして楽しめる。まあ,良いんじゃないかな? -------------- 各編について簡単に感想を述べる。 「アルバイト・アイは高くつく」:半導体会社に勤めるビジネスマンの恋人が誘拐され,犯人は半導体の横流しを要求してくる。容疑者を尾行した隆は,逆に犯人たちに捕らえられてしまう!・・・物語の第1話なので,状況の説明もあるが,とんとん拍子で事件が展開する。主人公がピンチになると登場する冴木パパ,格好良すぎ! 「相続税は命で払え」:有名な総会屋が死に,その未亡人からの依頼は,相続人に指定された行方不明の娘を見つけることだった。だが冴木たちを妨害する人々が現れ・・・スケ番とタレントばかりの学校,うーん,時代を感じる。事件の裏はちょっと複雑で,とてもこれで解決できたとは思えないけど,無理やりハッピーエンド。ゲイバーのくだりは良かった。 「海から来た行商人」:冴木涼介に私怨がある人物が来日した。彼はある国の関係者だが,裏では不正な商売を営んでおり,そのルートを使って冴木親子を襲ってきた。涼介は姿を消し,隆は父の元同僚にかくまわれたのだが・・・冴木親子のスーパーな大活躍で,まるで映画のようだ。ちょっとやり過ぎ。 「セーラー服と設計図」:冴木隆の友人が女性にだまされた。だが話を聞くと,その女性の裏には組織犯罪者がいるらしい。冴木親子は再び過去の因縁と向き合うことになる。・・・今回もとんとん拍子だ。事件に冴木パパの過去の関係者が絡み過ぎるのが気になる。フツーの事件を片付けつつ,たまに過去が現れてくる,というバランスの方が良いと思うけどなあ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2014.03.08 18:13:12
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