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カテゴリ:がちがちハードボイルド
〈アルバイト探偵〉あるいは〈アルバイト・アイ〉シリーズの(復刊)第4作目を読んだ。
○ストーリー 粕谷という男の登場で,冴木探偵事務所の所長の行動は怪しくなる。それを見ていた息子の〈アルバイト・アイ〉・冴木隆は,独自に調査を始めるが,六本木での銃撃戦に巻き込まれ,意識を失う。気が付くと隆は,いなかったはずの母親と妹と共に,見知らぬ街で暮らしていた。不自由の無い街での暮らしに混乱する彼の前は,この街の成り立ちを調べ始める。この街の危機を知った隆は,どちらの味方となるのか? ------------ 日本を離れ,異国の地で大冒険となった第3作に続き,この作品も渋谷や六本木を離れ,不思議の国〈諜報街〉を舞台にして進む。いないはずの優しい母親と美しい妹と暮らす主人公・隆。読者も主人公本人も,これってなんかおかしいよね?と知りつつも,そのまま物語は進む。 その不思議な街で発生する,謎の連続殺人事件・・・どんどん物語の流れが横へ横へとずれていくと感じつつ,ひょんなことで物語は本流へと戻る。 まあそれほど混乱を心配するまでもなく,大沢在昌の作品らしく,小さい範囲で辻褄は合うようになる。 ------------ 『プリズナー』みたいな,アメリカンサバービアで目覚める主人公。アクションシリーズとしては”あり”の展開だが,わずか4作目でここまで行ってしまうのは,さすがにぶっ飛び過ぎだと思う。 だって主人公の隆は,十分現実の東京を気に入っていて,自由に楽しんで生きている。どれだけアメリカンドリームが提示されようと,そこに溺れてしまうような,そんなキャラクターじゃない。 例えば,死んだはずの恋人が復活して一緒に暮らしてくれる,それくらいの魅力が無いと,楽しい現実を捨ててここで生きようとなんてしないはず。 そもそも根本の設定が間違っていると思う。間違えたのは,作者の大沢在昌か?それともラスボスの粕谷か? ------------ ただでさえ現実味の少ないハードボイルド探偵というジャンルで,前作では架空の東南アジアの独裁国家,今回は意図的に作られたスパイの街という舞台を用いることは,せっかく現代の東京でこのジャンルを語ろうとしてきたこのシリーズの魅力を大きく損なっていると思う。 たかが2作で,このシリーズの展開に限界を感じたのか?そんなはずは無いと思う。 〈007シリーズ〉の映画並みにぶっ飛んでしまったこの作品から,どのようにシリーズが展開していくのか?シリーズの再生はありえるのか?次作を楽しみにしたい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2014.09.16 22:30:16
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