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カテゴリ:きらきらポストモダン推理
鯨統一郎の〈タイムスリップシリーズ〉の第10作を読んだ。
〇ストーリー 中国の三国時代に歴史を改変しようとする組織が侵入し,蜀の劉備玄徳に成り代わった。歴史を元に戻すために,タイムパトロールと相談した現代の女子高生・うららは,本能寺から織田信長を連れ出し,呉の孫権の代理として王にたてる。三国時代は未来人が率いる蜀に支配されてしまうのか,それとも信長が率いる呉が覇権を握るのか?そして魏の覇王,曹操の動きは? ----------- 〈タイムスリップシリーズ〉は,そこそこ書きやすいのだろう。また,NHKとのタイアップもあったおかげで,いつの間にか10作目となり,多作な鯨統一郎のシリーズの中でも最多となってしまった。 今回の作品のレビューを読んでみると,〈作品設定がよく分からない〉という声がいくつか聞こえた。たしかに物語のキモである時間旅行の設定の整合性が怪しく,さらにこの作品ではほとんど説明がないという割り切りだった。これでは戸惑ってしまう読者がいても不思議ではない。 僕でさえ,今回のタイムスリップに巻き込まれたのが,主人公・麓うららだけなのか,彼女の友人2人も含まれているのかしばらく分からなかったし,久々にシリーズを読むのでいろいろと設定を忘れていて分からないタイミングもあった。 このシリーズを続けるつもりならば,もう少し初見の読者にも分かるような説明があってしかるべきだと思う。 ----------- 作品のタイトルがすべてを表しているようでもあるが,今回は織田信長を中国の三国時代に連れて行って天下布武ををさせようという,二重三重のタイムスリップ物語となっている。 鯨統一郎作品の中でも,ここまで無理のある設定は珍しい。それでもこのシリーズは,いつも通りのイキオイで突き進んでしまう。ただし,これまでは主人公・うららがそれを行っていたが,今回は信長を含め,三国志の英雄たちがノリノリでそれを行っていた。 僕自身は三国志には詳しくないが,ファンの人は喜べるif展開なのではないだろうか?蜀が悪者になっている点は,多くの人には驚きだとは思うが。 ----------- すっかり当初の作品量産ペースが落ちてしまった鯨統一郎だが,このシリーズが楽しく書けそれがリハビリになるならば,それもよいと思う。 誰に薦めて良いかどうか分からない作品だが,イキオイはある。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017.12.10 15:27:21
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