カント「啓蒙とは何か」を紹介します
なんで、今頃カントなの? 自分にもわいてくるところの疑問ですが。
カント(1724-1804)の「啓蒙とは何か」は、岩波文庫で12ページの小論です。
1784年9月30日に書かれたものです。
カントの主著とされる『純粋理性批判』は1781年刊で、『実践理性批判』は1788年刊ですから、その間に書かれたものです。
ちなみにフランス革命は1789年ですから、その前のことです。
四の五の言わずに、この小論の冒頭の部分を紹介しましょう。
「啓蒙とは、人間が自分の未成年状態を抜け出でることである。だけどこの状態は自分自身に責任がある。未成年の状態とは、他人の指導を受けずに自己の悟性を使用する能力のないことである。自分に責任があるというのは、未成年の原因は悟性の欠乏にあるのではなくて、他者の指導がなくても自分から悟性を使用しようとする決意と勇気を欠くところにある。
『知ることをあえてせよ』、『自分自身の悟性を使用する勇気をもて』-これが啓蒙の標語である」
プロイセンという国は、当時は国王による啓蒙的専制国家だったんじゃないでしょうか。
それは、やがて日本が、100年あとのことですが、明治維新のあとで模範としていくことになる国王による専制国家なんですね。しかしその国にあっても、その時代にあっても、その大学教授がこうした小論を堂々と発表していたんです。
やはり、伊達に名前が伝えられてるわけではないんですね。相当な精神を持っています。
専制国家の中にあっても、カントは民主主義的な精神、理論を培っていたんですね。
じつは、私などには、この本に想い出があります。
1968年でしたが、いまから50年も前のことですが、高校2,3年の頃に「この本を読んだ」、と言ってはおこがましいのですが、チラッとながめたんです。当時としてはいろいろ人生を模索していた中でのこと、もちろん読み込むことなんぞはできませんでしたが。それでもその時に、直観的な感想を仲間の出した同人誌に書いた記憶があるんです。何を書いたか、その中身は忘れましたが。
でも、その本だけは、その後上京したり、いろいろ転居などの変転もありましたが、今に至るまで本棚の片隅に残っていたんですね。最近見つけたんですが。
わずか12ページ足らずの小論ですが、その中にカントの批判的精神ですが、チラッと感じられる気がします。現在の日本の課題、民主主義を確認し、すすめようとしている活動でも、刺激にも、参考にもなるんじゃないかと思い、ご一読をお勧めします。