体験 ②
おもに、ご飯時とか、検温も回診も無い暇な時間。ベッドに横たわってボンヤリ窓からの風景を眺めて居る時など 隣室あたりから、それは、和やかな声が聞こえてくるのですよ。幼い女の子が居て、母親らしきひと、そして若い女性たち数人? 看護師さんは何時もワゴンを押したり、忙しく行き来しているので、きっと、少しの時間私語に花が咲いているのでしょうか?ママア~とか、甘えた可愛らしい声もします。女の子もいるんですね。女性たちは、小鳥のような賑やかく綺麗な声で笑いさざめき心から楽しそうで、聞いているだけで気持ちが和んできます。この、病室にに移ってから、時々、そんな声を聞くので、なんの違和感ももっていませんでした。連休に、たまたま他の患者さんが居なくて私一人ぼっちになりました。昼ご飯を食べていると、そんな声が、また聞こえて来たんです。食事をさげにやってきたヘルパーさんに隣の部屋には、幼い女の子が居るの? と何気なく聞いてみました。イエ ここは大人ばかりの病棟だから、お子さんは居ませんよ と。そう言われれば、そうなんだよね。 だって、だったら、さっきもしてたけど、あの楽しそうな、小鳥たちみたいな、あの会話はなに?なにがなんだか分からなくなりましたね。ママア~という甘えた可愛らしい声。ごはーん というおねだりの声、女性たちの笑いさざめく楽しそうな話し声・・・この間なんか、中年の男性もきて、なにやら落ち着いた声で子供をあやして?いましたよ。それから、私は、そんな会話や声がしたとき、慌てて廊下を見ることにしました。なんにも変わったことも無く、時には冷たい、薄暗い光った廊下には人影が行き来していて、何時もとおなじです。声は、でも、どこかでしているんですよ。隣の部屋は静かなんですよ。こんな時、怖くなると思うんですが私、なんとも思わないのですね~楽し気な声は、気が付くといつの間にか終わっていて、私もすっかり忘れているんです。 不思議、変 おかしいな。 もう、数年前になってしまいますが、インドの次男の処へ遊びに行きました。住まいは10階以上もある高層マンションでした。ある日の夜更け、その日は日没辺りから砂嵐が始まりました。夜更け・・・細かい砂粒が窓のガラスにサラサラと当たる気配を感じながら横になっていると、どこからか男性の声で、コーランというのでしょうか、テレビなんかでも聞いたことがあるお祈りを唱える?朗々とした声がしてきました。低く 高く 澄んだ美しい男性の声は切れることなく、いつまでも子守歌のように聞こえて来て 何処の世界の人も神にお祈りをするんなあ~ 人間は、どんな所に生まれようと根源は同じものを持っているのだ、コーランも日本の読経も共通しているのかも。などと、思い乍らいつしか眠りに落ちていきました。翌朝、皆に 夕べのコーランっていうの? あれはよかったね。うっとり聞いているうちに眠ってしまったわ と、話すと、皆はキョトンとして、コーランの声なんか聞こえないよ第一、ここは18階だし、深夜だし・・何言ってんの と笑われました。・・・・あれから、何年も経ちましたが、不思議な夜のコーランの声を私は、懐かしく今でも眠れない夜に時々思い出しているのです。・・・と これって 私は何処か変な処があるんでしょうかね?