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鍋奉行を揶揄してはいけない。 お奉行様は美味しい鍋を心がけて くれるのだから任せて信頼した方が得策である。 料亭にでも行けば 臈たけたお姐さんがいて全部塩梅してくれるからいいようなもの普通 は自分達でやらねばならぬ。
寄せ鍋でもチリ鍋でもすき焼きでも、特にてっちりなどは百戦錬磨の お奉行様がいた方がいいに決まっとる。 大皿に盛った具材のうち どれから炊くか、いつ上げるかによって鍋の味が変わるのである。
お奉行様が手づからおやりになってくれれば平(ヒラ)は黙ってそれに 従えばよいが、お奉行様が遠慮して温和しい場合はお奉行様にお伺い 立てた方がよい。 「お奉行様、どないしまひょ、何からいれまひょ?」 「そうじゃな~、先ず出汁の出るものから入れなさい、そして熱の通り 難いものを入れなさい」 「ハハ~ッ!」 ってなもんだ。
てっちりなら骨付き肉、トーフ、白菜の芯の部分、シイタケなどが先だ。 それを、初めから骨なし肉、白菜の葉っぱネギなどを入れるのは邪道。 もちろん、そんなことゴチャゴチャ言わんでも好きにやればいいという 人間達には何を言っても猫に小判だからどうぞ看過してちょうだい。
キャピキャピ娘と親掛かり息子達が囲む鍋はものの順序も何もない から手がつけられん。 何でも勝手に突っ込み煮えてないものを抓み 上げ、口にいれて、”あ~ら、まだ生じゃん” と言いながら鍋に返す。 もう食い箸も何もあったもんじゃない。 鍋から一旦上げたものを再び 鍋に返すのは失礼にもほどがある。
願わくば、入れた具材が煮えた頃に一斉に、はいどうぞと言って全部 揚げることである。 それからまた次の具材をどぼっと入れ、煮えたら ハイできましたと言って一斉に揚げるのである。 その繰り返しが一番 美味しく食べられる。 煮えたものも半煮えのものもゴッチャになってる 鍋は最低と言わなければならない。 その意味では鍋奉行という指導者 がいるかいないで鍋の満足度は大いに変わるのである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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