テーマ:海外旅行(7025)
カテゴリ:旅行記
せんだって、ベトナム社会主義共和国に遊びに行きました。
初めての海外旅行。二年遅れの新婚旅行。アメリカに勝った唯一の国。 ホーチミン(旧サイゴン)に三泊して、それなりにカルチャーショックを受けたのよ。 ベトナムの通貨単位は「ドン」。インフレ傾向にあるらしく、主に使われるのが「一万ドン札」。だから5000ドンとか1000ドンとか、おつりでもらうことはあるけど、使う機会はなかなか無いのです。 偽札防止のために紙幣は紙ではなく樹脂に変えられたらしい。透明な部分があるのがオシャレですな。 そんで、一万ドン未満の札は流通量が少ないからか昔ながらの紙で、もうくっちゃくちゃ。洗濯しちゃった500円札みたいな感じなんです。 よく使うお札の一万ドンが当時日本円にして66円くらいだから、金銭感覚が狂う。 500000。 こんな数字が並んだお金なんて、価値がわからないでしょう。3300円くらいだから、11ガンプラか。 物価が安いという意識があるのでついついお金を使ってしまうんだけど、市場とか土産屋は、呆れるほどの倍率でふっかけてくるし、たとえ数円とはいえボラれるのは舐められているみたいで嫌だし、後に続く日本人観光客にも申し訳ないし、でも欲しいものとか実際にゃボラれたところでそれでもなお安いわけで、だったらまあ買いたいし、「ワンミリオン」とか言われてもぶっちゃけ払えるわけですよ。なんだかんだで物価は安いし。 ワンミリオン。百万円だと腰が抜けるけど、ドンだからね。おおむね150分の1だもん。一万円札を両替するとワンミリオンファイブハンドレッドサウザンド以上になる。 うきー! うききぃぃー! インフレ、為替差、物価安。 わけもわからず富豪気分になれたんだけど、物価が安いのは人間が安いからだ。 先進国と比べて圧倒的に安い人件費が、僕らの物価感覚をしてクラクラせしめるのだ。 ◆ホテルのサービスでリフレクソロジーを受けた時。足モミのおばちゃんが気さくな人で、つまりおばちゃんで、妻の足を揉みながら鼻歌なんか歌ってた。僕の担当は内気な感じのアジア小太り美人で英語も解さない人だったので、妻担当のおばちゃんとばかり話していたんだけど、しこたまフレンドリーでな。 シンガポールや韓国の人と違って日本人は奥さんを大切にするとか、世慣れたお世辞も言いつつ、僕に向かってアレを歌えとかこれを歌えとかリクエストしてきた。まあ僕が鼻歌をリクエストしたお返しなんだけど。 そういうサービスが、ひとりあたり10ドル/30分。 マッサージの代金なんて純然たる人件費。ホテルの中のサービスだから割高にもかかわらず、日本のほぼ三分の一。 なんかね、勘違いするよね。 ◆前にも書いたように、ベトナムはカフェ文化が盛んだ。 現地の人が憩うカフェとガイジン向けのカフェがあって、まあコーヒーと軽食っつーことで、売っているものは変わりないんだけど、値段が10倍くらい違う。 越南人用とガイジン用みたいな二重メニューがあるのではなく、お店自体がマーケットのセグメントって点で違うの。 現地人が通うカフェは安くて、英語が通じなくて、衛生面でハードルが高い。コーヒー一杯三十円しないくらいかな。 水も、氷も、現地のバクテリアに慣れていない腹だと危ないわけです。場所によっては犬がうろうろしてたり。食品サンプルじゃなくて家畜なんだろうけど、狂犬病が怖いです。 屋台カフェじゃ、水溜りで食器を洗ってたからな。覚悟がいるよな。 そんでガイジン用カフェは、英語が通じて、衛生面で安心で、現地相場の5~10倍くらいの値段だったりするわけ。 衛生の徹底管理とか、英語接客とか、最近の感覚で言うと有料の「サービス」だわな。 現地人向けにセグメントされるであろう甘味屋に入ったんだけど、ガイドブックに乗っているので日本人の客が多いみたいで、有無を言わさず日本語のメニューを出されたのね。ガイドブックに書かれている値段の二倍だった。つったって、30円が60円になっているくらいのボッタ率なんだけど、アジアのたくましさやしたたかさを感じて微笑ましいとも言えるんだけど、だまし討ちにあった気分というか、こちとら食べたいもののベトナム語を勉強もしてたし、指差し注文でもいいのに、とくに必要も感じない「日本語メニューサービス」によって価格倍加ってのは、これサービスと呼べるのかしら、これで日本人客は喜んでるのかしらと、モヤっとした気分になった。喜ばねえけど納得するしかない。そんな感じだよね。 我々はサービスにお金がかかることを当たり前だと思っている。 金もらってるからニコニコ接客してやってるんだ。 こっちは客だぞ金払ってんだぞ。 接客態度と金銭は交換できるとなると客と店員が敵対関係となる状況が生まれやすい。 2ちゃん世論なんかでよくみるけど、サービス業を「親切を金で売る」みたいに捉えている人がいるでしょう。たまに。 極論するとそうなっちゃうかもしれんけど、プロってそういうことだけじゃダメでさ。 お金のために我慢してサービスするという場面もあるけど、客にそう悟られちゃ失敗してるし、客は苦役を強いてるわけじゃないわけでさ。 どこまでが「労働」で、どこまでを「サービス」に含めるのか。 何度か書いているように、ベトナムの人って基本親切なんすよ。あーえっと、カインドネス、ユノウ? 欧米式のサービスやホスピタリティって概念がいちおう行き届いている店は値段が10倍なんだけど、まあ安全が買えるのは助かるんだけど、でも市場の個人商店とか半分屋台みたいなカフェでも、やっぱり親切なんだよね。サービスになってるんだよ。もちろん中華スタイルの無愛想接客もあるけど、お客をあれこれ世話してあげるマインドって当たり前にあるんだよね。 お金をもらうから、ではなくて、お客さんだからっていう、ほんのちょっとの気持ちの違いなんだろうけど、ああ、なんかまとまらない。 つまり、同じものを扱っているお店で値段に10倍の差がついているにもかかわらず、サービス内容は(衛生面以外は)とくに差を感じなかったという経験によって、資本主義経済における錬金術の本質にちょっと触れた。人件費が超安い国なので、それが際立ったっていうか(サービス料金ってのは人件費そのものだかんね)。 「スマイル0円」という宣言が持つ、ちょっとグロテスクな部分に気がついたように思うのです。 社会主義国に行ってこんなこと書くと貴様転んだのかと言われそうだ。転ばねえよ。 ▲ちなみにこのカフェは、たぶん日本人が経営してる。 日本人観光客向けのオサレ内装。 人件費の安い現地人を雇って高価格帯の商売。 この手のお店は土産屋やアオザイ屋など、けっこう多い。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008.12.12 23:30:06
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