カテゴリ:ファンタジー連載小説!『カオス』
何日かしてデルガ-ド大陸の真中に位置する国、センタ・アマリ-ジョに到着した。 レックスはいつも以上に深くマントを被りこんだ。 ヴェルジェと初めて出会った頃より、より髭を伸ばしている。 立派な若者な風体ではない。 この国はデルガ-ド大陸、五つの国で一番領土が狭い国で、国の回りが天然の大きな 巨大石で、掘りになっている。 別名『エル・ドラルド』と言われる程、金や宝石が豊富に採取される。 ディーオの怒りの大地震の際、幻島や地球歴では大昔に滅んだ国等が浮かびだしたと言われる。 もともと、北の国と南の国は陸続きではなかった。 その間を埋めるように、センタ・アマリージョの人々は、この国を幻のエル・ドラルドが地底から姿を表わせたのだと。 その名の通り、きらびやかな黄金の建造物、それのみならず国の民までもが 数多くの装飾を身に纏い、ローブも鮮やかな黄色と言うよりは黄金色に近い。 目立ちにくい手頃な宿を探した後、ヴェルジェは国の雰囲気を見ようと、 ア-ロンと夕暮れの町並に出た。 すれ違う人は皆、上品な雰囲気で宝飾屋がゴ-ジャスさを競い合うかのように見えた。 店員が呼び込む言葉もどこか品を感じる。 少し歩くうちに占い師が街角に多いのに気づいた。 水晶占いやタロット占い、風水や八卦見等、多種多様の女性占い師の姿。 どこもたいして客の入りが良さそうではないのに何故かと思えば、二人の目に立て札が映った。 「王家の妃が謎の病に伏せた。妃の病の原因を突き止めた者、治した者に多額の報酬を受け渡す」 ア-ロンが声に出して読んだ。 ヴェルジェはア-ロンと顔を見合わせた。 すると二人の隣で立て札を見ていた男が説明した。 「街角で占い師が多いのは、報酬目当てだよ。ここで占いが当ると言う噂が出れば、 王家から妃を占えとお声がかかるんだ。 ただし、俺が知りうる限りでは、今までお呼びがかかったのは、 決まって若くて美人の占い師のみだな」 それで理解出来たが、レックスの話と一致する。 姉の嫁ぎ先はどうやらこの国一番の王家のようだ。 偵察を入れ、巫女族の姫の力を頼った理由がよく判った。 説明をしてくれた男は、聞きもしない事までいろいろ話すと、 二人に手を振り『またな』等といいながらその場を去っていった。 「変な奴・・」ア-ロンが呟きながらも、自分の手がその男に向かって 愛想よく振っていることに気づき、慌ててその手を下ろした。 「どう言う事だ?」宿に戻り、ア-ロンがぶっきらぼうにレックスに訪ねた。 「金持ちに嫁いだと言っただろ。逢えない理由もな。俺が血縁だと言う事は何人たりとも洩らすなよ。 苦労して髭を伸ばしたんだからな」 レックスはムスッとし、髭に手をやった。 「まさか、お前まで王家の者って言うんじゃないだろうな?」 ア-ロンの訝る眼差し。 「ほぉ~、俺様はやはりそう見えるか?」 「・・・見えねぇ!!・・・絶っ対見えねぇ!!」 ア-ロンの鼻で笑った様な返答にすかさずレックスの拳がア-ロンにヒットした。 王家に入り込む方法はただ一つ、占い師を装いよく当たると言う噂を出すしかない。 ルイならば,或は、母ならば堂々と、容易く王家の門を潜れたであろう。 ヴェルジェは思案した挙げ句、あえて『病専門』と看板を出した。 それなら症状を聞き、その人に合った薬草を調合すれば良い。 自分の得意分野だ。 目立つため、ア-ロンとアリスがテントの前で呼び込みをした。 レックスの私考でヴェルジェはいかにもそれらしい占い師の神秘的な装いに身を纏い、 名をプレシアと偽った。 レックスはヴェルジェとテントの中に入り、常に顔を隠しマントを深く被った。 シュヴァ-リエは情報を得る為、偵察に出ている。 『あの無言男がどうやって偵察するんだ?』 とアーロンのつっこみがあったのだが。 『病専門』と謳ったので、最初、客は半信半疑でほんの僅かだったが、客一人一人、 症状を丁寧に聞き、占いの雰囲気も醸し出させる為、香を焚きしめ心の病にも対応した。 数日すると『薬が効いた』等と少しずつ反響が出始め、日増しに客が増えた。 一週間程すると、客の『楽になった』『完治した』等と言う喜び感謝される言葉を 沢山聞いたヴェルジェは、自分の技術が役に立っている事を痛感し、心底嬉しく思った。 そしてそれから然程日にちかからず、王家の遣いがやってきた。 なんとも単純だ。 「我が国王であらせられる、デアル王が其方らの占いの力を買われた。 よって其方らを城に通す事の許しが出た。早急に準備致せ」 と、なんとも厳かな重々しい物腰で。 当初、謁見出来るのはヴェルジェのみだけだと言う家来に、 『薬の調合等には皆、欠かす事が出来ない』 と言い、武器になる物は持参しないという条件で、なんとかヴェルジェ達全員が謁見を許された。 五人は速やかに身仕度をすると、王家の馬車に乗り込んだ。 王家の城へと続く分厚い門を潜り、派手やかな城の中へと進んだ。 それから城の広間でヴェルジェ達は暫く待たされ、玉座の間に通された。 玉座に腰かけている王は、まだ三十そこそこで、いかにも気むずかしく冷酷さが漂う、 何もかも我が物に出来えると言うような傲慢な顔つきだった。 少なくともアーロンにはそのものに思えただろう。 しかし皆は恭しく、王の前に傅くと頭を深く垂れた。 「其方らか?巷で評判があると言う占い師とは?」 王は淡々と言った。 「さようでございます。王様」ヴェルジェが答えた。 「占うのはそちか?」 「はい私、プレシアと申します」 「其方のみで充分であろう。占いや薬師にそんなごつい輩は要らぬであろう」 深々とローブで身を隠しているレックスとシュヴァーリエのとこだ。 「いいえ、王様、彼らには薬草の採取や調合を手伝ってもらっております。 その社業には計り知れぬ程の力がいるのでございます。 彼らの力なくしては、私のよく効く薬は作る事ができないのです」 「ほう、左様か・・・其方の名はプレシアか・・良い名だ。 顔を上げよ・・・・おお、なかなかの美女だ」 ヴェ-ルに殆ど顔を覆っていると言うのに、何処を見て美女と言ったのか。 デアル王の表情が綻んだ。 「お誉め頂き、真に光栄に存じます」 「まずは其方のみ通そう。先に私の体を厭うがよいぞ。プレシア」 デアル王の言葉に、後ろにいたレックスが気を乱した。 ヴェルジェは後ろを制するようレックスに、そっと手をかざした。 「ありがたきお言葉、感謝致します」 ヴェルジェはより一層深く頭を垂れた。 そしてデアル王の言葉に従ったヴェルジェは、レックスに安心させるかの様に、 微かに微笑むと、数人の家来と共にデアル王の間へと姿を消した。 レックス達は城の随分奥の方へと案内され、地下に下りた所の部屋に案内された。 その部屋の重い扉を閉ざされると、その扉の向こうには見張りの看守が常駐していた。 「体を厭えってどう言う意味だ?」 ア-ロンが小声で怖い顔をし、俯いて怖い表情をしているレックスに聞いた。 「あんたガキねぇ、そんな事も判らないの?・・身体よ・・カ・ラ・ダ・・あのエロ親父のエッチの相手をしろって事よ。 いい身体してるもんね。ヴェルジェって」 アリスがアーロンを馬鹿にするように言った。 「な・・な・・」 ア-ロンが叫びそうになるのを、アリスが慌ててその口を塞いだ。 「静かにしろ!あのエロ王!首根っ子かき切ってやる。俺は行くぞ。 ヴェルジェの事を考えると・・」 レックスの手がワナワナと震えた。 「レックス、もう少し待つべきよ。彼女はある程度覚悟してついて行った筈よ。 彼女なりの考えがあるのに、邪魔立てしない方がいいわ。 うかうか動けば逆に彼女の首を締めかねないかもしれないし」 アリスが平然と言った。 レックスは唇が切れる程、強く噛み締め、拳を壁にぶつけた。 ア-ロンは、まったく表情を変えず動じないシュヴァ-リエにくってかかった。 「お前はヴェルジェ様が心配じゃないのかよ?顔色一つ変えねぇで!まったく気にいらねぇ・・・なんとか言えよ!!」 シュヴァ-リエはア-ロンの言葉に一瞬、目だけ向けたが無視した。 ア-ロンはそんなシュヴァ-リエの身体を掴み、彼を力一杯揺さぶった。 実際は微動だにできなかったが。 そんなア-ロンにシュヴァ-リエは 「大丈夫だ」 と無表情なまま答えた。 「あら、どうしてそう言いきれるのかしら?」 アリスもシュヴァ-リエに偉そうな口調で追求した。 「状況判断できない女ではないだろ」 シュヴァ-リエにしては随分な長セリフ。 二人とも何も言い返す事が出来なかった。 「ねぇ、それよりこの部屋、なんか危なくない?」 アリスがキョロキョロと辺りを見ながら呟いた。 「ああ、石壁に覆われた牢獄擬きってとこか」 レックスが不貞腐れた表情をしながら呟いた。 壁が石だと言うのに床が簡素な木のフロアというのは妙だ。 おまけに微かにその床下から冷気が感じられる。 落とし穴でもあるらしいのはピンとくる。 暫く沈黙した後、アリスが突然、扉をどんどん叩いた。 「ねぇねぇ、叔父さん、おしっこに行きたいよぉここからだして~!」 扉の向こうの看守に言った。 「駄目だ」 「お願い、漏れちゃうよぉ」 アリスが懇願する様に訴えた。 見た目の幼さを武器に、なんとかこの場から抜け出る作戦だ。 二人の兵が顔を見合わせどうするか困っていた。 ア-ロンはいつも大人ぶるアリスが、いきなりガキみたいな 発言をした事に面食らっていた。すると向こうから門番の兵の方に男が近づいて来た。 瞬時に兵がその男に敬礼をしたので、少しは偉い役職の者なのだろうと察しはついた。 その男が門番の兵にコソコソとなにやら耳打ちした。 耳の良いアリスがその内緒話に顔色を変え、扉から後ずさりながらレックスを見た。 意味が判らないレックスは只事ではないと思い、アリスに近寄り門番を見たその時、 案の定床底が抜け、皆が底に落ちそうになった。 アリスが耳にしたのは自分達の処分方を聞いたからだ。 『カオス18』へ・・・・To be continued このお話は私が作成したものなので、勝手に他へ流したり、使用するのは絶対止めてね。 ★初めから読むなら1 朱鷺色の章 1 Prologue の扉へどうぞ★★続きを読むなら 『カオス18』 4紅寶の章 (罠)2 へどうぞ★
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Last updated
October 6, 2006 09:24:46 PM
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