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オフィシャル“飲食コンサルタント”である「大久保一彦」の誰も言わない外食のトレンド

オフィシャル“飲食コンサルタント”である「大久保一彦」の誰も言わない外食のトレンド

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February 26, 2011
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日経レストランコラム”非常識”2006年3月号より

 「マンション構造計算偽装問題」「ライブドア強制捜査とホリエモン逮捕」
「米国産牛肉輸入再開とBSE危険部位混入問題」「東横イン違法改造問題」などなど、
世の中を騒がす大きな事件が闊歩している。

 これらの意味するものは何か?
 「東横イン違法改造問題」は、飲食店の未来を暗示している。
安さを実現したローコスト経営は、誰かの犠牲の上で成り立っているということだ。

 私は、昔から仕事でよく出張している。
一昔前は、居心地がほどほどで、しかもリーズナブルなホテルは少なかった。
「東横イン」が増えたおかげで、出張の時に使うホテルの選択肢は大いに広がった。
 広めのベッドに、ブロードバンドでインターネットに接続でき、女性スタッフによるサービスも感じが良い。
おまけに、朝はおにぎりと味噌汁が無料で食べられる。
この立地にしてこの価格とこの広さ。
本当に安い。

 でも、これはどこかで聞いた言葉じゃないだろうか?
そう、構造計算を偽装していたとされるヒューザーのマンションだ。
ヒューザーも立地を考えると確かに広くて安かった。

割安は異常
 私達はバブル崩壊後、デフレに直面して、リーズナブルなもの、費用対効果が高いものに注目するようになった。
バブルの時は異常だったという反省がその背景にある。
 しかし、時は流れ、私達がこの10年追い続けてきた経済性、より割安なものを求める行動も、また異常だったのではないだろうか?

 「東横イン」を見ているとそれを感じる。
彼らは安さを実現するために、違法改造を行った。
そしてあれだけ客室がありながら、深夜の数時間は一人で回すようにシフトが組まれていたと、報道で内部告発されていた。
事故が起こらなかったから良かったものの、万が一、火事でもあったなら、誘導する人員が足りず、逃げ遅れるお客で、大惨事になっていたかもしれない……。
 そう、必要最低限の安全性しか確保せず、ギリギリで営業する。
これが安さの代償だったのだ。

 BSE(牛海綿状脳症)問題も、安さや美味しさの代わりに何かを犠牲にしているのは間違いない。
「狂牛病のリスクなんて低いんだし、そもそも因果関係なんて説明できない。美味しいんだから、米国産の牛肉でいいじゃない!」これは私の知人の精肉業者が勉強会で言い放った言葉だ。
 「東横イン」問題は隣の火事ではなく、将来飲食店でも起きかねないことを暗示している。

 我々は、リーズナブルという一見、合理的な価値のために、多くのものを犠牲にした。
 最も大きな犠牲を強いたもの。
それは、人だ。
 お客様に安く提供するには、それなりの人件費に抑えなくてはいけなかった。
だから正社員をアルバイトに変え、そのアルバイトも必要最小限に抑えた。
市場の拡大期、そこそこの料理を提供できれば、お客は満足し、従業員にはそれほどの技術は必要無かった。
 こうして作ったビジネスモデルは、一度できあがるとなかなか壊せない。
売り上げが落ちると、利益を出すため、人件費を削る。
従業員はさらに効率を追求しなくてはいけなくなる。
現場からはやりがいも、プライドも無くなってしまった。
まさに、悪循環だ。

店の雰囲気は「人」が作る
 新橋に「一由(いちよし)」という夫婦二人でやっている店がある。
小さな日本料理店だが、訪れるお客の支持は絶大だ。
 秘密は二人が醸し出す店の雰囲気にある。
なぜか、割烹着が似合うのである。
聞き上手で、話し上手、お客様との絶妙な間は、誰もをほっとした気分にする。
ご夫婦とも、少し丸みのある体型で、それがまた割烹着とマッチしているから、余計そう思うのかもしれない。とにかく、この店は、居心地が良く、和むのである。
 わざわざ行きたいと思わせるには、店のトータルコーディネートが必要な時代になった。
料理、内装、接客。
人は、その中でも最も重要なパーツの一つである。
 あの元気のいいスーパーは、青果担当のおじさんの手が違う。
あの手を見たら、野菜が美味しそうに見える。
野菜が美味しそうに見えれば、他の商品も美味しく感じる。
人は価値を作る根源なんだ。
価値を作る重要なパーツなんだ。

 にもかかわらず、飲食店は人件費の流動化と称して、働き手のアルバイト化を進めてきた。「そんなことはない。教育にはお金を使ってきた」
そんな反論もあるかもしれない。
確かに、会社の決めた方針を守ってくれるための研修はしたかもしれない。
だが、人に力を入れてきたとは言えないだろう。
 今、飲食店の人不足は深刻だ。
 そして、これからますます人手不足は深刻化する。
私の恩人フードシステムの古田基氏によれば、外食先進国、米国でアルバイト・パートを募集するコストは、一人あたり10万円かかると言われているそうだ。
 今のチェーン店は単純作業ばかりで、辛く、苦しく、汚く、給料も低い。市場拡大期に仕組み偏重主義をとった大きなツケだ。
こんな、飲食店に人が集まるわけがない。
 手遅れになる前にすべきこと。
それは、魅力ある店を作ること。
そして店の将来像を描き、従業員に対してもそれをしっかり伝えること。
「私の店は、あなたにこういうことをしますよ」と将来を約束するんだ。
これが大切だ。
 将来の約束。
それは、店に必要な人と長期的なお付き合いをすることにほかならない。
時間を切り売るするだけのアルバイトはもう要らない!
 あなたがまずすべきこと。
 自分の経済的な利益より、あなたのまわりにいる、あなたが関わる人を幸せにすることだ。
 これまで外食企業は、店を増やし、株式公開を果たし、従業員の給料を上げることを目指した。それが産業化の近道だと皆が思っていた。

おカネだけでは続かない
 しかし、おカネだけでは人間関係は長くは続かない。
人間関係を円滑にすること。相手を思いやり、自分の関わってるお客様や従業員や取引先を幸せにすることこそ、いまこそ必要なことなんだ。
どこかでバランスを欠いてはいけない。
 今、大問題になっていることはすべてここに根がある。
 関わる人に幸せになってもらおう!
そんな気持ちがあれば、いずれは大きな炎となる。
それが目に見えるようになれば、あなたの炎の温かさを慕って人が集まるだろう。
 今こそ、アルバイトを解雇して、店のシナリオにあった従業員を見つけることを真剣に考えてみてはいかがだろうか?
店という舞台で、役者として活躍してくれる確かな人材を。


大久保一彦のコラムのオムニバス


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最終更新日  February 26, 2011 08:48:28 AM
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