泳ぐひと(フランク・ペリー監督、原作・ジョン・チーバー、1968年米国)
「泳ぐひと」(フランク・ペリー監督、68年)がそれで。場合によっては、これまで見た映画の1位に僕が挙げる作品でもあります。 バート・ランカスター演じる主人公が、水泳パンツ一枚で友人の家のプールに現れる。そこから、主人公は友人の家のプールを次々と訪ねて泳ぎながら家に帰る、っていうことを試みる。 ストーリーはそれだけです。 ランカスターが演じる中年の晩期に差し掛かっている男のパンツ一丁の肉体が見所の一つにもなってて…。この男、映画のラストまで、ついに水泳パンツ姿だけで貫き通して描かれてます。 まあ、寓話か怪談と言っていい。でも、郊外のプール付きの家、つまりアメリカで成功した人の象徴となっている住まいを裸の男が訪ねて回る、っていうとんでもない発想から、残酷なまでに主人公、そして周りの人物の真実の姿っていうのをこちらに想像させてくれる映画になってます。寓話であり、現実でも通じるってところがミソで。 チーバーの原作は、僕は原書(短いので読みやすかったのです)でしか読んでません。ただ、これは映画の勝ち、と思った記憶はあります。 なぜなら、映画のランカスターの50を過ぎても鍛え抜かれていて、だぶついてない肉体っていうのが、余計いろんな悲劇的要素を感じさせてくれていたためで、言うまでもなく、小説ではこの肉体を表現するのは難しいし、短編では絶望的と言って良かったと思います。 映画と原作の間、の中に入れましたが、これはともに同じテーマで。で、本来、奥行きは映像があって想像力が限定される映画よりも小説の方が深いケースが多いのですが、これは逆でした。 (下)「泳ぐひと」のレーザーディスクの表紙。 長い間、私はこの作品をこのディスクか、VHSの ダビングテープで繰り返し見てました。ネットで 調べると、昨年6月にDVD化されてるみたい。 買いに行こう、と。フランク・ペリー監督の作品、って DVD化されにくいみたいで「リサの瞳の中で」と「去年の夏」 って二本も、僕は見れてません。「去年の夏」は、 エバン・ハンターの原作が残酷でせつなくて、って青春もの で、本当に是非見たいのですが。