片岡仁左衛門 親子三代 特別公演
仁左衛門ファンの夫とともに、サンケイホールブリーゼへ「親子三代特別公演」を見に行く。ブリーゼは小さめの真黒なホール。今時こんなモノクロ、安普請な感じ……。初めの挨拶で仁左衛門丈も「えーと、『フリーズ』でしたっけ?」とホールの名前をよく覚えておられない様子であった。いいのかこけら落としなのに。1つめの演目は千之助ちゃんの「雨の五郎」。確かこれ、恋人に会いに廓へ行く時の舞踊じゃなかったか……。8歳に色気はまだ早いぞ。ちびちびながら見得を切り、しっかり足の親指まで立てているのは、末頼もしく目頭が熱くなる。がんばれ千ちゃん。2つ目は「時雨西行」。遊女孝太郎は衣装付きだけど、なぜか仁左衛門の西行は紋付き袴。でもいい! きれい! 西行になってる! ステキ!(なんでもいい)最後はお待ちかねの「聴く勧進帳」。仁左衛門が勧進帳を一人で語る。全員の声色を使い分け、演じ分けるのはさすが。落語のように上下を切ったりしないので、勧進帳を見たことのない人(夫だ)にはさっぱりだろう。弁慶と富樫の丁々発止のやり取りもたった一人で。……さすがに途中で一瞬同じセリフを繰り返してしまい、はたと止まっておられたが、だ、大丈夫です。(なんでもいい)このために横浜から来た友人(先週も「オペラ座の怪人」を見に来阪していたはずだが)は感激のあまり泣いていた。このために2万円はりこんだ夫は、「勧進帳」がわからなかったらしく呆然としていた。