カテゴリ:私の本棚
いわずと知れたベストセラー。
高野和明『ジェノサイド』 これに手を出したら仕事も家事もストップする…という危惧があったので、 購入してからずっと放っておいたままになっていたのですが、 結局、それが現実になってしまいました(^^;;;) 最初の100ページくらいはちょっとずつ読んでたのですが、 残りの500ページ弱は、途中で止まることができなくて、 昨日一日で一気に読了。 読み終わったら夜中の1時半・・・。 今日はちょっと寝不足です。 「おもしろかった」という言葉は、この本の感想としてはふさわしくない気がします。 事実、読み終わってから床についたら、怖い夢を見ました(^^;;;) 読み終わってすぐに感じたことは、 日本ってなんて平和な国なんだろう・・・。 そして、 こんなに平和ボケしてていいのかな・・・? 物語は、終わりの見えない戦乱状態が続く中央アフリカを 舞台にした戦争&諜報サスペンス・・・と思わせておいて、 「えー?!そっちの路線だったの~??」と軽く裏切られた気がする 大きなどんでん返しが待っているんですが、 それはおいおい述べるとして。 全体を貫いているテーマは、 戦場という極限状態に追いつめられたときの人間の残虐性と、 そんな究極の状態でも現れる人間の良心。 それらは、国も人種も民族も宗教も関係なく、人間に不偏的に存在する、 ということ。 そのために、登場人物の国籍も人種も多岐にわたります。 でも、人間の良心を際立たせるためだと思うのですが、 ここまで描く必要があるだろうか?と思うほど、残虐なシーンが 息つく暇なく続くので、 読み終わったときにはかなり疲れました。 登場人物とその人たちが活躍する舞台にリアリティを持たせるために、 いろいろな専門分野の詳細な解説がところどころに挟まれます。 たとえば、 分子生物学、創薬化学、疫学、医学、数学、民族学、人類学、地政学・・・。 よくもまぁそこまで詳しく調べましたね、というほど、専門知識がふんだんに 折り込まれていて、 読む人によっては、物語の本筋に必要のない小難しい話を延々と・・・ と思う人もいると思うのですが、 私には逆に、そんな細部のリアリティを徹底しているからこそ、 荒唐無稽にも見える本筋も、「ひょっとしたら起こりうることかも?」と 納得させられてしまうのだと思いました。 実は、途中まで、非常に緻密にリアルな細部を積み重ねて、 リアリティあふれる戦争&諜報サスペンスを組み立てていっているのに、 あるところで、そのリアリティが決定的に崩壊する新たな設定が 露れます。 もう、「えええーーー!?そっちの流れのお話しだったの~~~!?」 と、がっかりしたくらい荒唐無稽な設定。 でも、その荒唐無稽な設定をも、 再び、緻密に細部のリアリティを積み上げて話が進んでいくうちに、 最終的には「ひょっとしたら、実際に起こりうるかも?」と 納得させられてしまいます(^^;;;) 『神は細部に宿る』 ということじゃないかと。 人間って救いようのない生き物だ、と淡々と絶望が描かれるのですが、 絶望の先には、かすかに希望の灯りがともっている、 そんなストーリーでした。 ただ、最後の最後まで大きいスケールでスピードを落とすことなく ストーリーが進むのですが、 ラストシーンは、平和な日本で登場人物が一堂に会して大団円、のような ちょっと安直なハッピーエンドになっていたのには、少しがっかりでした。 あまりにも救いのないシーンの連続に、 著者は、ほっと一息つきたかったのかな? そんな気がします。 でも、そんな救いのないシーンの連続が、 この地球上で実際に起きている真実の一部でもある、と考えると、 なんか、こんなにのほほ~~~んと生きていていいんだろうか?と、 ふと胸の奥が苦しくなるような、そんな読後感が残っています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
May 22, 2012 04:46:31 PM
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