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カテゴリ:映画 サ行
『サラエボの花』を観ました
第二次世界大戦後のヨーロッパで最悪の紛争となったボスニア・ヘルツェゴヴィナの 内戦によってもたらされた深い爪痕に苦しむ母娘の再生と希望の物語を描く 衝撃と感動のヒューマン・ドラマです >>『サラエボの花』関連 原題: GRBAVICA GRBAVICA: THE LAND OF MY DREAMS ジャンル: ドラマ 製作年・製作国: 2006年・ボスニア・ヘルツェゴヴィナ/オーストリア/ドイツ/クロアチア 上映時間: 95分 監督・脚本: ヤスミラ・ジュバニッチ 出演: ミリャナ・カラノヴィッチ ルナ・ミヨヴィッチ 【ストーリー】 ボスニア・ヘルツェゴヴィナの首都サラエボのグルバヴィッツァ地区。 女性たちの集団セラピーに通いながら12歳の娘サラと2人で暮らしているシングルマザーのエスマ。 生活は苦しく、子どもがいることを隠してナイトクラブで深夜まで働く日々。 一方、父親がシャヒード(殉教者)であることを誇りに思っている活発な少女サラは、 サッカー中のケンカがきっかけとなり、同じシャヒードの遺児、サミルと友情を深めていく。 そんな中、サミルから父の最期を訊かれ、何も答えられなかったサラは、父のことを 話そうとしないエスマに、次第に不満を募らせていくのだったが…。 ここから先はネタバレを含みます。ご注意を 母娘、 真実を生きてゆく ボスニア・ヘルツェゴヴィナの内戦が終わった後も人々の心に深い爪あとを残している様子が 戦争の悲惨なシーンを盛り込まずに表現されていて、 悲しくもささやかな希望が見える見応えのある作品でした。 美しく響く歌声と共に映し出される悲しみに満ちた女性たちの表情。 一体彼女たちに何があったのか? そんな内戦によって傷ついた女性たちのための集団セラピーに通うシングルマザーのエスマは、 内戦の影響で夢を諦め、12歳の娘サラとのつましい生活のために奔走する毎日。 サラの修学旅行費を捻出するため仕事を掛けもちし、ナイトクラブで働くことにするなど、 愛情深く、頑張り屋の母親であります。 演じたミリャナ・カラノヴィッチが辛い過去を隠し、複雑な思いで娘を愛する母親の心境を 繊細に演じていてすばらしいのであります。 クラブの用心棒とのロマンスに素直に喜べず、娘へ真実を隠し続け、ボロボロになるまで 身も心も傷ついている様子が痛々しく伝わってきます。 一方、娘サラは、戦死者の遺児は修学旅行費が免除されると知り、 母に提案するも幾度と無くうやむやにされ、 強く父親の事を知りたいと思いはじめるわけであります。 そんな純粋で思春期真っ只中のサラを演じたルナ・ミヨヴィッチが なんともふてぶてしく、子悪魔的な可愛らしさで役柄に見事にハマっています。 そんな母と娘に訪れたロマンスや、修学旅行を巡ってのドタバタに絡めて、 内戦で傷ついた人々の壮絶で悲しい過去、 内戦で失ってしまったものを間接的に描き出し、 戦争の悲惨さを静かに強く訴えかけてくるストーリー展開が絶妙で目が放せませんでした。 そして、どんどん関係が悪化してしまう母娘に、 ついに真実を明かさなければいけない瞬間が訪れます。 両者の思いがぶつかり合うこのシーンは、非常に痛々しくて切なくて、観ていられないほどでありました。 真実を知ってしまったサラの決意の行動も、 まだまだ子供だった彼女の心には抱え切れないほどの大きな傷だったのだろうと 複雑な思いが伝わるシーンで胸が痛くなりました。 そんな壮絶なぶつかり合いの末、途切れてしまったかに思えた2人の思いが、 静かに、それでいて確かに繋がりあっていると感じられる ラストシーンが温かな余韻を残してくれて、 ほっと胸をなでおろすことができるのでありました。 戦争の悲惨さを直接描くのではなく人々の思いに焦点をあてて描いた深い物語と、 絶妙な構成と演出、出演陣の好演が光る一本でありました。
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