「少女には向かない職業」 桜庭一樹
13歳メイドといえば、シャーリー・メディスンだが、これぞまさに、13歳の火曜サスペンス劇場だぁぁぁぁっーーー!!!?悪意と、バトルアックスで二人の人間を殺した、13歳の少女の物語なんだけど、殺人者は、職業じゃないと思うんだよね・・・。「GOSICK」と対を成す、「推定少女」、「砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない」の桜庭先生作品です。まあ、殺人トリックと、犯人を突き止めるのをミステリと定義する方には、ミステリーっぽくないと思われるわけですが、殺人を犯した13歳の少女の、心理描写と苦悩を描ききる点が、実に見事だと思います。ミステリでよく使われる、トリックを駆使して、殺そうと試行錯誤する点が、ミステリっぽいといえば、そう思えるわけで、さすがに13歳なので、穴がありまくりなのは仕方が無いのですが・・・。しかし、13歳故に、疑われない。親が良い娘だと思い込んでいるから、疑われない。周りの人たちも、普通の女の子だと思っているから、疑われない。という、完璧な犯罪になっているという点は末恐ろしいものがあります。コレ、13歳じゃなかったら、むかつく義父を殺す娘と、唯一の目撃者となり、自分の犯罪に協力を求める、悪女の物語という、火曜サスペンス劇場で良くありそうなパターンにはまってるよなぁと思ってしまったわけですが、まあ、13歳というアンバランスな年齢の少女の心理を描く作品なので、コレもありなのかなぁと思ってしまいました。しかし、凶器がバトルアックスなのは、桜坂洋さんの「All You Need Is Kill」にインスパイヤされたのでしょうかね・・・?「砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない」も凄かったですが、あちらがいたたまれない感情に流されて一気に書いた作品だっただけに、この作品のほうが、練りに練ったという感じがよく現れており、完成度という点において、こちらの方が上という感じがします。成長したという感じでしょうか、このままライトノベル作家を卒業してしまうのではと不安になってしまいますが、ライトノベル作家という偏見でなく、文芸としてきっちり評価して欲しい作品ではあります。大人たちは、自分たちの理論を押し通すだけだった、「推定少女」大人たちは、結局何もできなかった、「砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない」同じように、大人たちは、少女のSOSに全く気づかないでいるというブザマさの中で、唯一救いだったのは、おじさん警察官がヒロインの気持ちを理解できていたという事でしょう。もっと身近な人がこのSOSに気づいていれば、こんな事件は起こらなかっただろうに・・・。13歳のゲーム好きの少女が、バトルアックスで人を殺すなんて、ゲーム脳だとかマスコミははやし立てるだろうが、本当にその背景にあるものを、あいつらは何も知らないんだ。少女には向かない職業著者:桜庭一樹出版社:東京創元社発行年月: 2005年09月サイズ:単行本/231p本体価格:1,400円 (税込 1,470 円)