今般、将棋界でマスク騒動があったが、あれはマナーではなく、ルールの問題である。「健康上の理由がある場合や飲食など一時的な場合を除きマスクを外したら反則」と定められているのだから、相手が訴えた時点で負け。そもそも、対局中のマスク外しが問題になって改訂されたルールなのだから、訴えた永瀬八段に何の責任があるのか。ルールを厳格に適用した連盟側にも落ち度は全くない。その辺りが分かってないと「永瀬はセコイ」みたいな阿呆な発言をする奴が出てくる。
昔、こんなことがあった。昭和29年(1954)第13期名人戦第2局、大山康晴名人vs升田幸三八段でのこと。熱戦の果てに迎えた最終盤は、一分将棋の秒読みに。「60秒」と読まれたら負けだから大抵は2、3秒前に着手するのだが、悩みに悩む升田八段、指そうとした瞬間、記録係は「60秒」と読んでしまった。
おおよそ記録係というものは奨励会員が務めるから、棋士に対していきなり「…60秒」と読むのは人情的にも厳しく、「57秒、58秒、○○先生、指して下さい」とか言って数秒引き延ばして、それでようやく着手する、ということが結構あった。この日の記録係はそういう忖度をしないで、厳密にやったわけだ。
その瞬間、大山名人が「アッ」と声を発し、升田八段は「時間、切れたか」と聞く。記録係が「はい、少し」と答えると、升田八段は「それじゃ負けだ」とあっさり駒を投じた。これとて、升田八段がごねればトラブルになったかも知れないが、「ルールはルール」と認めたからこそ、収まったのだ。その潔さが如何にも、ヒゲの大先生らしい。
個人的な感想として、佐藤九段が不服届を出したのは、少し残念。A級順位戦という大きな勝負だったから、気持ちは分かる。気持ちは分かるが、そこで瘠我慢して見せてこそ、面目を施したはずなのに。
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Last updated
2023年02月01日 13時39分30秒
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