愛と栄光の果てに(第3話) ~エヴァリスト・ガロアの生涯~
【第3場】 1870年冬の日曜日 パリ市郊外のとある教会の共同墓地私、オーギュスト・シュヴァリエは妻のカトリーヌと娘のマリー、そして恩師のリシャール先生と一緒に自宅近くの墓地へと来ていた。「エヴァリスト・ガロア(1811-1832)」。そう刻まれた墓標の前に我々は立っていた。「おめでとう、エヴァリスト。とうとう君の才能が認められたんだよ。」そう言って私は花束と『ル・モンド』を墓前に捧げた。リシャール先生とカトリーヌは小さく涙を流し、ハンカチでそれを拭った。「伯父様、おめでとうございます。」マリーが小さな笑みを浮かべて優しくそう言った。「この祝辞をエヴァリストが生きている間に聞かせてあげることができたら…。」リシャール先生がそう言った。我々と神父様は黙ってその言葉を聞いていた。墓標の周りにしばしの沈黙が流れた。それは、たくさんの祝辞とそれと同じくらいの惜念を重たく物語っていた。「…ねえ、皆で伯父様の為に賛美歌でも歌ってあげましょうか。」マリーが重苦しい雰囲気を優しく溶かすかのようにそう言った。神父様はにっこりと笑ってうなづき、それに同意した。そして、神父様の合図で『うるわしの白百合』を歌い始めようとしたその時、1台の馬車がやってきた。厳かな蹄の足音は、墓地の入り口の前で止まった。そして、中から2人の男女が降りて、こちらへ歩いてきた。その2人の姿を見た時、私は驚愕の念と沸々と怒りが起こってきた。カトリーヌとリシャール先生も無言の驚きを放っていた。その2人は、ペシュー・デルバンヴィルとその妻ステファニーだった。「お久しぶりです、皆さん。」ぺシューは帽子を取って軽く挨拶した。ステファニーも無言で軽く会釈した。「何しにやってきたんだ!」私はそう怒鳴った。「・・・新聞でガロアさんの偉業を知りまして、お祝いの花を墓前に捧げようと思いまして・・・。」ぺシューはそう言った、いや、言おうとした。その言葉が終わる前に私は彼の元へと駆け寄り、そして拳で彼の頬を殴打した。「おまえがくれた花などエヴァリストが喜ぶものか!・・・」私は怒りにまかせてそう叫んだ。そして、第2、第3の拳を振り下ろそうとしたが、リシャール先生とカトリーヌが必死になって私を制止した。「おやめなさい!ここは神聖なる墓地ですぞ!」神父様の声を聞いて、私は若干の冷静さを取り戻した。怒りを込めた拳はとりあえずは下がった。ぺシューはステファニーに手を貸されて立ち上がった。「あの…よろしければ・・・。」マリーがぺシューにハンカチを差し出した。そんな奴に優しくするな、私はそう言おうとしたが、言葉がのどに痞えた事と、私の気持ちを察したカトリーヌが先回りして私の身体を抱きしめるようにして押さえていたので、何も出なかった。「メルシー、マドモァゼル(ありがとう、お嬢さん)。」ぺシューはそう言って埃を払った。ステファニーも礼を言うかのように会釈をした。「お久しぶりです、皆さん…。」ぺシューはそう言って深々と礼をした。「できれば一生顔を合わせたくなかったがな!」私は怒り交じりにそう言った。 *この原稿書きかけ。後ほど加筆します。