浮　世

フセイン元大統領：死刑判決

イラク中部ドジャイルで１９８２年７月８日にに起きたイスラム教シーア派虐殺事件をめぐる裁判の判決公判が５日、当地の高等法廷で開かれ、フセイン元大統領に人道に反する罪で死刑判決が言い渡された。


イラク高等法廷で死刑判決を言い渡されたフセイン元大統領

　　　　　　　

大統領の親族で元情報機関当局者のバルザン被告と、元革命裁判所の元主席判事アワド・バンダル被告も、死刑判決を受けた。バンダル被告は法廷で「神は偉大なり」と繰り返し叫び、退廷させられた。フセイン元大統領も判決文朗読の際、「神は偉大なり」「イラク万歳、イラク国民万歳、裏切り者を倒せ」などと声を荒げた。

公判は予定より予定より１時間以上遅れて開廷し、フセイン元大統領と旧政権幹部７人に順次判決を言い渡す方法で進められた。バース党幹部モハメド・アザウィ・アリ被告は、証拠不十分で無罪。３人の被告には殺人および虐待の罪で実刑１５年が言い渡された。 ラマダン元副大統領は計画殺人罪で終身刑。

被告側弁護団の１人としてクラーク元米司法長官も出廷していたが、判事らはイラク国民や高等法廷を台無しにするために米国から来たとして、クラーク氏に退廷を命じた。

有罪判決を受けた被告には上訴が認められている。手続きは判決内容によって異なり、終身刑判決および死刑判決については自動的に上訴審が開かれる。上訴審の審理期間は無制限だが、死刑執行は全ての上訴審終了から３０日以内と規定されている。


ブッシュ政権にひとまず朗報

　フセイン元イラク大統領に対する５日の死刑判決は２日後に投票が迫った米中間選挙で劣勢に立つブッシュ共和党政権にとってひとまずは朗報だ。開戦の理由とした大量破壊兵器をイラクで発見できずにイラク政策で信頼失墜を招いただけに、ブッシュ政権は今回の死刑判決を盾にフセイン元大統領を追放したイラク戦争の「正当性」をアピールする見通しだ。だが、中間選挙での有権者の主な関心はイラクの治安情勢であり、判決が共和党に弾みを与えるかどうかは疑問だ。


判決公判に出廷したイラクのフセイン元大統領

　　　　

　スノー米大統領報道官は判決に対し、「今日はイラクの人々にとって良い日だ」と歓迎した。ハリルザド駐イラク米大使もイラクが「法の支配に基づく自由な社会の建設に向けて重要な段階を迎えた」と評価した。

　判決公判が中間選挙の投票直前に重なったことでは公判の政治利用を疑う声も出ている。ＡＰ通信によると、フセイン元大統領の弁護士、ブシュラ・アルハリル氏はベイルートで１日、「ブッシュ大統領は死刑判決が共和党候補の利益になると信じている」と批判した。これに対し、ハリルザド大使は公判日程の設定と中間選挙は関係がないと否定した。

　フセイン元大統領拘束（０３年１２月）や「イラクの聖戦アルカイダ組織」を率いたザルカウィ容疑者の殺害（今年６月）がブッシュ政権の支持率を押し上げたのは事実だ。

　だが、カーネギー国際平和研究所のマリナ・オタウェイ中東研究部長は「ブッシュ政権は判決によりイラク戦争の正しさが証明されたと訴えるだろう。しかし、判決はイスラム教スンニ派の抵抗運動の火に油を注ぎ、イラクの聖戦アルカイダ組織は情勢悪化をあおる機会ととらえるはずだ」と分析する。

　イラク高等法廷に米国は設置準備から深くかかわってきた。現地ではテレビ放映される公判を「米国の操り人形劇」と見る市民も多いとされる。判決はイラクにおける反米感情をさらに刺激し、イラク安定化という米政権の最大の懸案に悪影響を及ぼす可能性が高いとみられる。



待ちに待った判決が下されました。ここに来るまでに時間をかけすぎたのか　北朝鮮とイランが核開発に走り、また世界が混沌と・・・



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