マジック・ザ・メイカー7話「魔女と来訪者3」
マジック・ザ・メイカー7話「魔女と来訪者3」 悪臭を放つ光彩はユラユラとうごめきながら池の中へと入っていく。それのいた後は草は枯れ、土は灰色のヘドロと化していた。冥珂らは慎重に目を離さずそれのいた場所に向かう。『……』『ダ=ガ?』『妙なんだネ。この星のものが影響を受けたのだとしても、あんなエネルギー体になるはずもないんダ。変異した出来損ないの生物になるか、もしくは完璧に擬態化するか。あれはまるで対象の一部がさまよっているようだヨ』「アタシはあれによーく似た存在を知ってんねん……」 冥珂は忌々しげに言った。『ではこの星に関係する存在だと?』「どうなんかな……でもあれによく似た存在と契約してた奴はいたんよ」 タロットカードを眺めながら昔を思い出しながら言った。『そうか……7次元から出てきたもしくは影響されたものではなく、【過去に呼び出された】存在の一部残っていたんだネ。それなら干渉の跡が無いのも頷ける』『メイカといったな?あれはどの程度のものだ?』「あんな弱弱しくない状態のを知ってるけど……せやな、この星がちょっとヤバくなる程度かな。今の状態を見るにそんな力はなさそうやけどな」「おい、気をつけろよ……殺気をバリバリ感じるぜ」 スフィンクスは銀色の甲冑をまとった猛獣の姿に変身した。「KLUUUUUUUUUUUUUUUUUUUU!!」 光彩が水面から飛び出した。その姿は鯉に虹色の昆虫の翼と軟体生物を思わせる触手を生やしていた。『デュア!』 青い光の剣を十字に振るうドイラ・バ、空間に切れ込みが入り宇宙空間が姿をのぞかせる。そこからシャワー状のまばゆい光線が放たれた。 「KLUUUUUUUUUUUU」 トンボ返りで回避する異形の魚。急降下し触手で攻撃を仕掛ける。『シュア!』 左手を前に突き出すドイラ・バ。光の壁が出現し異形の魚をブロックする。はじかれた異形の魚は地面に落下するもすぐに体勢を立て直し再び宙に浮く。「任せても大丈夫そうやね」『私はこれでも上級戦士でね』「KLUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUU!!」 触手を大きく四方から高速で伸ばす異形の魚、光の壁を避ける軌道を描きドイラ・バに襲い掛かる。『シュア!』 高速回転するドイラ・バ。光の剣の軌道が円を描き触手を切り裂いていく。緑色の悪臭を放つ体液をまき散らしながら異形の魚は後ろに下がる。『デュア!』 シャワー状の光線を再び放つドイラ・バ。異形の魚は避けきれず光線を浴び砂状のチリとなった。『おつかれおつかれ……さて回収するかネ』 ハンドガンを思わせる機械を向けるダ=ガ。リング状の光線が放たれチリを光のキューブに閉じ込める。『これの正体は分析してみないと分かんないけどこれでこの周辺のエネルギーの乱れは無くなったネ』『船に引き上げるかダ=ガ。念のためにこの星全体に検索をかけてくれ』『そうだネ。この星の衛星軌道上に乗って広域検索をかけよう』『それではメイカ、ワレワレはこれで失礼する』 銀色の筒状のボタンを押し光の刀身は消すドイラ・バ。光のキューブを持ったダ=ガは振り返らずにUFOに向かう。「おつかれさん」 冥珂は二人が去っていくのを眺めていた。「……」 静まり返った公園にたたずむ冥珂。いまだに警戒態勢を解かないスフィンクス。「冥珂、さっきの魚野郎やっぱり……」「異次元のものの力やね」「殺気はまだ残ってるぞ」「せやね。宇宙人らが持ってったのは異次元のものの体の一部や。あれを連れてた奴が近くにおるな」「宇宙人は自分たちの目標の他は興味なしかよ」「しゃあないね。必要以上にかかわらんのが彼らのルールなんやろ」 冥珂は神経を張り詰める。軽機関砲は殺気を放っている相手の方向に向けられている。「……」 殺気の相手を燻りだす為に冥珂はダークパワー(魔力)を全身から並の人間なら中てられただけで体調不良や気絶に追い込まれる程の濃度で放出する。「容赦ねえな」「自然界の獣でもまず自分の力を示すように威嚇するやん?いきなり突っ込むのは獣以下や」「そらそうだ」 冥珂のダークパワーに驚いた小動物や池の生物が一斉に騒ぎ出し離れていく。池のそばにある一本の木の陰からうめき声がした。「カルルルルルルルルル……」 現れたのは犬と人間を掛け合わせたような頭部、両脚は逆関節の蹄、皮膚はボロボロにただれていた。「グール……か」「せやな……異次元のものの一部を使こおうて何かしてたんやろうけど死んでグールになったんやなこれは」「微妙に残ってる服からするに……白衣……研究者か何かだったか?」「なんにせよ放っておくわけにはいかんな」 冥珂はグールの反応を確かめずに容赦の無い軽機関砲の嵐のような弾丸を浴びせる。「くるルLUUUUUUUUUUUUUUUUUU!!」 激臭を放ちながら肉片体液を飛び散らせ吹き飛ぶグール。「剣の10!」 冥珂がタロットカードを池に放り投げると水が盛り上がり、ウォーターカッターを連続発射、グールを賽の目に切り裂いていく。肉片と化したグールは体液を大量にまき地面に散らばった。「――――――――――――――――!!」 虹色の光彩を放つ肉片グール。空中に浮きあがり体液で肉片を繋ぎとめる。「ちっ……それなら剣の6!」 冥珂がカードを出すのと同時にグールはツギハギの右手を飛ばしてきた。ライダースーツに張り付いた黄金のアーマーが光を放ち、右腕は冥珂の体1Mの所ではじけ飛ぶ。「スフィンクス!」「おうよ!」 スフィンクスと剣の6のカードが合わさり巨大な銀色砲台に変形する。そこから放たれるのは青白い波動。公園の木々を噴き飛ばし地面をめくりあげグールにヒットした瞬間、巨大な火柱が上がった。煙が晴れたあとにはクレーターが出来ていた。グールは塵も残さずに消滅した。「公園の形が変わっちまったな」「隕石の落下とかでごまかせるって……もう何の気配もないね」「ないな」「ん?」 冥珂のコンパクトが振動し始める。「まさか……この反応は……イッシー!出てきて索敵や!!」「は、はーい!」 女教皇のカードから飛び出すイッシー。両腕を広げ神経を研ぎ澄ます「UFOのあった方向に反応アリです!これって……」「魔女が近くにおるな……藤邑みたいな偽物やないで」 イッシーと感覚を共有した冥珂がつぶやいた。―UFOゥオーは両手の原子破壊光線の照準を合わせて警告する。「警告。そこから先の侵入は攻撃の対象となる」「あらあらあら……これは掘り出し物のエイリアンだねぇ」 そうつぶやいた眼鏡の女性。首から笛を下げ、大きなとんがり帽子のつばは広くライオンの装飾、ベルト状の生地を繋ぎ合わせたドレスは漆黒で装飾は蛇、ブーツは重火器を思わせ装飾は熊が施されていた。「一足遅かったみたいで先にお前らにとられちゃったからソレいただきにきたんだ」「攻撃開始」 ゥオーの原子破壊光線が火を噴く。だが、メガネの女性には命中しなかった。ウォーの背後に立っている。口には笛が咥えられていた。「!?」 女性の重火器状の靴がゥオーの背中に着けられる。その瞬間小爆発が起き、ウォーは前のめりに倒れこんだ。「あら?硬いねぇ?戦車の装甲もぶち抜く魔弾を使用したのに」「飛行ユニット損傷……対象の排除を続行する」 フレキシブルアームをのばし原子破壊光線を放つゥオー。またも女性には命中せず公園の木に円の穴を開けただけであった。「はいどーん!」 ゥオーの側面に立った女性はドレスの袖からショットガンを取り出し、至近距離で連射する。ゥオーは大量の弾丸を浴び体勢を整えられない。「テリー!」 そう叫ぶ女性、背中のバッグから飛び出したのは犬のぬいぐるみであった。あっという間にゾウほどの巨大な犬に姿を変える。ゥオーの両腕を前足で抑えつけた。「あんたの心臓部は……フムフムここか」 眼鏡越しにゥオーのボディを眺める女性。ショットガンを投げ捨て赤黒いリボルバーを取り出す。『そこまでだ』 UFOから出てきたのはドイラ・バ。光の剣はすでに抜かれていた。「テリー!!」「ガアアアアア!!」 巨大犬の口からガトリング砲の砲身が現れ大量の弾丸を吐き出した。ドイラ・バは光の盾でガードする。「あっはっは……こっちはこれで終わりねぇ」 リボルバーを放つ女性。ゥオーの胸部に命中。うなりをあげながら弾丸は光の渦をまとい回転、ゥオーの装甲を貫いていく。『ゥオー!』 嵐のような弾丸をガードしながらドイラ・バが叫ぶ。女性の放った弾丸はゥオーの装甲を突き破り体内へ突き刺さる。そして内側から30もの棘をのばしゥオーの全身を貫いた。「戦闘不能……ドイラ・バ、すまない……」 ゥオーは沈黙した。『ゥオー!!』 光の剣を構え体をプロペラめいて回転させるドイラ・バ。多少の被弾をしながらも巨大犬に接近する。『ジュア!!』 光の剣を振るドイラ・バ、のこぎり状の光輪が飛び出し巨大犬を真っ二つに切り裂いた。「ジュア!!」 続いて女性に光輪を投げつける。女性はドレスの裾を翻し弾き返す。左手には装飾の施された円形の盾が持たれていた。『何!?ゥオーの原子破壊光線に並ぶこの技が!!』「あっはっは!実際には当たってないからねぇ!!どんな威力のある武器も当たらなきゃ意味ないんだから」続く