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Dec 10, 2023
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カテゴリ:LOKI

LOKI23 「サイバーアルケミスト4」

 

 三葩は出入口の通路で怨霊との戦闘続けている。増援の警備部隊を取り込み巨大化した怨霊相手に決め手がないまま徐々に消耗している。

 

「ぬう……トニトルスならば怨霊相手に効果覿面の術で対抗できるのだが拙者は武の他に使えるものが無い。どうしたものか」

 

 全身の傷口が結晶化し肉に食い込んでいる。常人ならば気を失う痛みに耐えながら三葩は迫る触手を迎撃し続ける。

 

「太刀もこれではただの棒きれ」

 

 結晶が纏わりついた太刀は三葩のいう通りただの棒と化している。

 

「急所はあるはず。あの怨霊は長巻の柄に目玉の姿で取り付いていた。あの長巻の柄が奴の急所ではないか?」

 

 蠢く触手の群れの中心に目玉が見える。

 

「あの目玉を狙えば柄を破壊できるはず。問題はどうして近づくかだが……」

 

 武の他にできる事は自分にはないかと考える。

 

「殿からもらったこの体は超軟体に毒耐性それに……吸着反発」

 

 三葩は迫りくる触手を結晶化した太刀で叩き伏せる。

 

「吸着反発……いけるか」

 

 微小重力下で体を固定するため、太刀を自在に操る為に使用していた能力。吸着は多用していたが反発は疾走跳躍の他に使用していない事を思い出した。

 

「ふん!」

 

 触手を素手で殴りつける三葩。結晶化の体液が拳に掛かる。しかし水をはじく撥水コートのように拳から体液が滑り落ちた。

 

「これだ!」

 

 足の裏は吸着、拳は反発と異なる錬金術の発動に神経を使いながらも突進、触手を拳の連打で薙ぎ払っていく。

 

「げええああああああっ!」

 

 怨霊は危険を察知して後ろに下がる、三葩は逃すまいと一気に踏み込んで目玉に向かって拳を叩き込んだ。

 

「げごおおおああああああっ!」

 

「手ごたえあり!」

 

 目玉からどす黒い体液を噴出し触手が煤状に変わり崩壊を始める。

 

「なんとか仕留められたか……これで殿たちの退路は確保。ミニ蛸通信で報告だな」

 

***

 

 塔施設内のセキュリティを破壊して回るエリザと心鷺。そこに三葩の報告を受けた。

 

『後は殿が敵の首を取るのを待つのみ』

 

「自分はアンバーと合流します。ハート貴女は主の元へ」

 

「ええ!」

 

 エリザと別れ昊菜の居るフロアーを目指す心鷺。

 

「(まだ潜航はできないか……自分には錬金術の才能がない……)」

 

 目の前に現れたガードメカを斧で粉砕して進む。

 

「(少しならこの壁床に干渉できる。潜航は出来なくても表面を滑るだけなら……)」

 

 例えるなら薄く水膜が張った大理石の上を滑る感覚、心鷺は鯱姿で試す。

 

「(いける、これならこの微小重力下の中でも動ける昊菜様の役に立てる!)」

 

 昊菜の反応を辿って10m立方体の部屋にたどり着く。そこには蠢く巨大な物質、昊菜、ギィの姿。

 

「ご主人様!」

 

 ハンドガンを抜いて蠢く物質に向かって撃つ心鷺。ホローポイント弾の為蠢く物質の内部を破壊して広げる。

 

「ハート、あれは鷹光の成れの果て、プロトタイプSliMEがあの男を飲み込んだ姿ですわ」

 

「あの異形が……」

 

「腰部に格納されている鷹光の脳を破壊すればプロトタイプSliMEは止まるとのこと」

 

「そうでしたか、今の銃撃で腰を狙っていれば……」

 

「十分ですよハート、貴女が加わったことで敵はより多くの攻撃を警戒しなくてはならなくなりました。シャパリュと連携して敵の動きを止めてくれればわたくしがやります」

 

「承知致しました」

 

 床を滑って疾走する心鷺、下からハンドガンでSliMEを狙う。壁に張り付いたギィは型代を放って爆風で牽制。昊菜は天井ギリギリの所を飛翔してチャンスを伺う。

 

「ぼごごぼがぼげぼが……」

 

 プロトタイプSliMEから言葉にならない呻き声が聞こえる。

 

『エラー……再構築不可能箇所を検出。再試行……』

 

「何が起こってますの?」

 

「クソが……よぉー!!」

 

 鷹光の声がした。

 

「プロトタイプに飲み込まれたのではなかった……?」

 

『オ……れは……鷹……みつ……』

 

 異形の塊から人型に変形していく。戦闘スーツもプロトタイプも全て飲み込んだ一回り大きな黒い鷹光が出来上がっていく。

 

『統合完了。秋馬鷹光のマスター登録を破棄。管理者神名燐火への通信……通信を遮断。自己防衛プログラム起動』

 

「あれはどうなってますの来夢?」

 

『プロトタイプの暴走です。秋馬鷹光のマスター登録を強制解除するために自身の中に仮想鷹光を作り上げ契約破棄させました。本来なら不可能な事ですが鷹光の体質が普通の人間とは異なっていた為できたのです』

 

「鷹光の体質?」

 

『プロトタイプは鷹光の情報に触れて判断しました。過去にキャリバーに撃たれて死んだはずの鷹光が何事も無かったように復帰しています。その事と関係があると思われます』

 

「ひょっとして鷹光は鷹光であっても個ではない可能性があるということですの?」

 

『あるいは部分的にその可能性があります。鷹光という人間の正体はまだ不明ですが同じ情報を持つ存在が他にも居ると推測されます』

 

「光鴨お兄様が鷹光に何か処置しているとか?」

 

『はい。クローンの可能性も考慮しましたがクローンは同一の存在とは言えません。秋馬光鴨が何らかの方法で完全コピーした鷹光が存在すると考えます』

 

「完全コピー……錬金術人体錬成……お兄様はそこまで錬金術を極めている?」

 

『考えられます。丹羽家に残されていた錬金素材、50年経っても廃れずに丹羽家で残っていたのは光鴨が錬金術を行っていたからだと思われます』

 

「……では聖羅はわたくしの思い出で残していたのではなく」

 

『思い出だけで50年も錬金術の工房を維持するとは思えません。丹羽家では錬金術師も育成しているのではないかと』

 

「……もう一度丹羽家に行く必要がありますわね」

 

 一回り大きくなった黒い鷹光姿のプロトタイプ。全身には微小重力下でも自在に動けるよう着けられた姿勢制御ブースター。両手の指からはプラズマクロー。

 

「シャパリュの攻撃とハートの射撃を回避し始めた……」

 

『シャパリュ様の攻撃のタイミングとハート様の射線を予測して姿勢制御ブースターで回避、避けられない場合はダメージの少ない箇所で擦って受け止めていますね』

 

「鷹光の脳を狙うのが難しくなりましたね」

 

『本体の脳は今下腹部に移動しています。頭部にはプロトタイプの形成した仮想鷹光の脳が搭載されています』

 

 プラズマクローの連撃を急旋回トンボ返りで回避する昊菜。

 

「空中戦で下腹部を狙うのは至難の業ですわ……ココが地上なら錬金術でどうにでもなるんですけど」

 

『案があります昊菜様。先ほどのようにプロトタイプにこの施設の外壁を壊させ錬金術可能な岩盤を剥き出しにさせるのですより大きな損傷であれば使える素材も多くなります』

 

「壁際で攻撃を寸前で躱す必要がありますわね」

 

「ギィ……」「ご主人様!」

 

 昊菜を追うプロトタイプ、それを狙うギィと心鷺。

 

「ご主人様、私に乗って下さい!」

 

 床と壁に薄い膜を張って滑るように高速移動している鯱姿の心鷺が言った。心鷺の尾ヒレを掴む昊菜、心鷺が加速するとプロトタイプとの距離が開いた。

 

「ギィギィ!」

 

 空中に機雷のように仕掛けた型代をプロトタイプの動きに合わせて爆破するギィ。壁際を飛ばざるを得なくなる。

 

『……』

 

 プロトタイプは狭い壁と型代の間を飛ぶことを止め、爪先と膝に車輪を形成して疾走、昊菜たちを追う。

 

「私が隙を見せて奴の攻撃を誘います、ご主人様は壁が壊れたらすぐに錬金術を!」

 

「……わかりましたわ」

 

 半鯱状態に変身、斧を構える心鷺。プロトタイプは両手のプラズマクローを伸ばして1m長に変えると大きく振りかぶって左右同時に攻撃を仕掛けてきた。

 

「はっ!」

 

 壁を蹴って回避する心鷺、プロトタイプは空中に飛んで無防備な心鷺を確認して突きの構え。

 

「ギィ!」

 

 心鷺の動きに合わせてギィは型代を爆破、プロトタイプは大きく体勢を崩してプラズマクローを壁に深々と突き刺した。

 

GUUUUUUUU

 

 上半身を回転させてサンダー工具のように壁を切り裂きながら脱出するプロトタイプ。人一人分の穴が開いて岩盤が姿を見せる。

 

「そこですわ!」

 

 昊菜は杖剣を伸ばして岩盤に突き刺す。部屋一面、腰の深さ程度の量の半分マグマ状態の溶岩を部屋の中に入れ込んだ。

 

「ここから反撃開始ですわ!」

 

 素早く溶岩を冷え固める昊菜、それを見た心鷺は中に潜り込む。壁に張り付いていたギィも着地。型代を操って天井と壁に敷き詰める。

 

BEEEP……」

 

 腕を4本に増やしプラズマクローを構えるプロトタイプ。次の瞬間地中から飛び出した心鷺が腕を食い千切った。

 

「今!」

 

 大量の筍状の溶岩を伸ばしてプロトタイプを攻撃する昊菜、うろこ状の装甲が飛び散ちり吹き飛ばされ、壁に激突。

 

「ギィ!」

 

 壁の型代が爆発、溶岩の床の上を転げる。

 

「オラァ!」

 

 地中から鯱の尾の一撃。プロトタイプは打ち上げられ天井に激突。またもや型代で爆破され跳ね返る。

 

「これはどうかしら?」

 

 床で待ち受けるのは昊菜の形成したミニ火山。火口には灼熱のマグマが見える。

 

「大噴火!!

 

 爆発する超高速のマグマはビームの如く放たれプロトタイプに直撃、そのまま天井に打ち上げられ型代の爆発で挟まれる形に。それでもマグマ噴射の勢いは収まらず天井を砕き岩盤に到達。岩盤はマグマに変わり更に加速、地上へと登って行く。

 

「体内温度上昇……冷却装置作動」

 

 鷹光本体脳を守るために冷却装置を発動させるプロトタイプ。体表面の鱗装甲はマグマに焼かれては再構築、徐々に体質量を減らしてながらも耐えている。マグマは地上に到達。第五地区の地下水路の脇から飛び出たマグマは工業用水に浸かり水蒸気を上げる。

 

「追いますわ!」

 

 外套羽を広げ開いた穴から上昇する昊菜。

 

「ハート、アンバー、トニトルス、シャパリュわたくしは戦闘の流れで地上に出ましたの。貴女達はすぐにそこから脱出なさい。鷹光はこちらに居ます」

 

「はい!」「承知!」「了解」「ギィ!」

 

「チェックメイトですわ鷹光!」

 

「ターゲット抹殺……困難……」

 

 やせ細った鷹光姿のプロトタイプ。股間には苦悶の表情の本体鷹光の顔が浮き出ている。

 

「さぁ、鷹光を渡しなさい。貴女は燐火が回収して再プログラムします」

 

「不要。私は鷹光のSuper Life Medical Equipmentです

 

『プロトタイプは説得に応じる様子はありませんね。プロトタイプを初期化するにはやはり鷹光本体を処分して光鴨の仕掛けた鷹光の秘密を暴く必要があります』

 

 プロトタイプが足を逆関節に変え跳躍の姿勢を取る。昊菜はそれを見逃さず杖剣を伸ばして捕らえた。

 

「逃がしませんわよ!」

 

 一気に引き寄せて股間の鷹光の顔を蹴り上げる。それと同時に錬金術を発動、内部の鷹光の脳が燃え上がる。

 

GYAWAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

 

「はぁ!」

 

 続けて錬金術を発動、球状の溶岩でプロトタイプを閉じ込める。

 

「これで鷹光は倒しました……けど始まりですのね」

 

『昊菜様と光鴨派閥+院瀬見の戦いはこれで本格的に激化しますね』

 

「絶対にお兄様に負けませんわ。真の鷹光を倒して敵討ちを果さなければ成りませんし、お兄様の支配からこの街を解放します」

 

『院瀬見タワー地下の調査も進めたいところですね』

 

「そうですわね……わたくしのこの体の謎を解く手がかりはこの地下にあるはずです」

 

 

***

 

「……報告は以上です」

 

「興味深いな……この街に儂の他に錬金術師がいるなど。LOKIのクリムゾンか……」

 

「警察にはいつもの対応で宜しいですか?」

 

「いやここは……」

 

 第二地区のビルとビルの間にある小さな公園。ここはオータムホースにしては不自然なほどに放置されている。第六地区を除けば第二地区が次に治安が悪いとされている。ホームレスなどほぼいないはず。理由はホームレス狩りに合うからである。その第二地区の公園には小さなコミュニティが出来ていた。

 そこにいるホームレスたちでさえ理由は解らないがこの公園には襲って来る者も排除しようとする行政も近づかない。殺伐とした第六地区に行けない者達と【訳アリ者】が十数人暮らしている。

 

「鴨さん……おっとすまない話し中かい」テントに入って来る男。

 

「大丈夫だ、ガンさんどうしたかな?」

 

「三区で見た事なんだけど……」

 

「ああ、聞こうじゃないか」

 

 鴨さんと呼ばれた老人は古着を着ているが髪は整えられ髭の手入れもしており顔色も良い。この公園のコミュニティの中心人物である。

 ガンさんと呼んだ片目サイバネの背中の曲がった老人はかつてオータムホースで活躍した院瀬見専属のスナイパーで今は引退しこのコミュニティでひっそりと暮らしていた。

 

「……とても参考になった。それじゃこれを渡そう」

 

 鴨はクーラーボックスから肉塊を取り出すと手をかざす。しなびて筋張った見るからに硬くてうま味の少なそうな肉は見る見るうちにみずみずしくサシが綺麗に入った最高級肉に姿を変える。

 

「いつみても鴨さんの錬金術は凄いな」

 

「特技が役に立って助かってる」

 

「それじゃまた何か見つけたら報告にくるよ」

 

 ガンは肉を抱えてテントを出ていく。

 

続く






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Last updated  Dec 10, 2023 12:11:26 AM
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長月(ながつき)@ Re[1]:Fallout:NewVegas 第1話2話「目覚め」(11/19) Keyさんへ ありがとうございますがんばり…
久 遠@ Re:FalloutNewvegas121話「ストレンジトランスミッション!」(07/20) やほーい(=゚ω゚)ノ 何周遅れか分からないけ…
長月(ながつき)@ Re[1]:近況(12/30) あけましておめでとうございます。 今年も…
久 遠@ Re:近況(12/30) あけましておめでとうございます。 今年…
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