大手デペロッパーに勤める松永光弘は、自社の現場に関する悪い噂の真偽を確かめるため、地下へ調査に向かう。たどり着いた不気味な祭祀場で、鎖に繋がれた男を発見し解放するが…。『小説野性時代』連載を単行本化。
大手デベロッパーに勤める松永光弘は、自社の現場に関する『火が出た』『いるだけで病気になる』『人骨が出た穴』というツイートの真偽を確かめるため、地下へ調査に向かう。異常な乾燥と嫌な臭い―人が骨まで灰になる臭いを感じながら進み、たどり着いたのは、巨大な穴が掘られた不気味な祭祀場だった。穴の底に繋がれた謎の男を発見し解放するが、それをきっかけに忌まわしい「骨灰」の恐怖が彼の日常を侵食し始める。
本書は、大火や戦災や震災で犠牲となった多くの死者の「灰になるまで焼かれた骨」の上に立つ大都市東京を守る「祭祀場」を巡る物語。業務命令で迷い込んだ地下の工事現場で、主人公はたまたまその一端を目撃し、善意からあることをしでかしてしまう。東京都内の各所にはそうした祭祀場が百ヵ所以上あるといい、作中で語られる祭祀場とそれを守り受け継ぐ一族の歴史は、現実の高度経済成長やバブル景気や二度のオリンピックの華やかな歴史と重なって、恐怖のリアリティが迫ってくる作品で、著者初のホラー作品でしたが、読み応えがありました。。
【満足度】 ★★★★