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カテゴリ:読書日記
ビジネスでも、シューマッハーの『スモール イズ ビューティフル』の思想に影響があると思っていました。 アメリカでは”Small is beautiful"が政治思想であること、そして、その根底には自由主義=オールド コンサバティブ=共和党やリバタリアンの保守本流の中心思想であるということを中央大学時代に知り、アメリカの政治思想は経済思想やビジネスのやり方にまで影響を与えているんだと。 このような考え方は、日本の学術的な研究では発表されていないので、自分自身でしか知り得ない発見として、妙にワクワクしたものです。 日経ビジネス人文庫の翻訳本は良書が多く、最近では買いだめていた本を読んでいるような状態です。 今回は複雑化する業務内容、仕事について「もっとシンプルに」「もっと単純化して仕事の能率を上げることができるはず」と、論考している本が、この本です。 この本の狙いは「シンプリシティ(単純化)」なんですが、私がこの本で「そうだよなぁ~」と納得したのが「情報の活用の仕方」が、あまりにも今のサラリーマンなど管理職が下手であるという指摘です。 P51に 「企業で働く60%~80%は、ビジネス上の決断に必要な情報を発見できないか情報をあっても自らの決定に生かせないと考えている」 日本企業では、この比率がもっと高いように思います。 なぜなら、日本の経営の意思決定なんて、所詮多数決か鶴の一声、言い出しっぺに全て責任を追わせ、美味しいところは横取りし、失敗すれば責任転嫁する体質だから。 大企業や同族経営の会社は、この状況だと思うのですが。 たまたま、顧客であった超大手の建材会社さんと飲んだ時に、住宅の建築予想についての話になり、「うちの会社、統計 全然使わないんだよね」と。 例えば、住宅着工件数や景気の予測など、地方自治体や国が統計調査を行なって、公表されているって、誰も知らないわけです。 都道府県別に住宅着工件数や予測の統計って、調べればあるんですよ。 だから、お客さんに聞くより全体の統計から「どのように住宅建材が動くのか?」が、マクロ的に分析できるわけなんですね。 それを時系列統計で追っていけば、エクセルでグラフにすれば、大体の目安や予測レンジが理解できますよね。 こういう情報の使い方をしている方、ほとんどいないんですよ。 私も先輩に予算作成のために、「お客さんのところで、需要予測を聞きに会社訪問してくるわ。」と聞いて、「なんて非効率なことをしているんだろうなぁ~」と思っていまして、お得意先のお客様とのお話は非常に有意義なお話で盛り上がりました。 会社の予算作成でも、ずーとプラス予算なんてやっている方、多いのでは? そりゃ~マイナス予算なんてしたら、上司や経営陣から「ヤル気あるのか?」と叱責を受けるのが嫌だから渋々作っているのでしょうが、もっと現実をみたほうがいいと思うんですよね。 マイナス予算になる原因って、いろいろあるんですが、最低 経済統計で「こういう調査があるから、マイナス予算で、マイナスの幅を落とさないようにします」と理解できる経営者が、ほとんどいないというのも問題だと思うのです。 日銀の短観など、経済統計では「あまり当たらない」のが私の印象。 もし、経済統計で将来の景気を判断する材料は、内閣府が発表している景気ウォッチャー が、一番信頼できる情報なんですよね。 あと、この本では従業員・対顧客とののコミュニケーション不足が仕事を複雑化すると。 特に、業務における重要性と緊急に対処しなければいけない業務との区別、時間的な制約が、仕事を非効率にさせているとの指摘です。 時間に追われて仕事をするというのは、日本の仕事の典型ですよね。 ただ、行き当たりばったりのやっつけ仕事をすれば、そりゃ~どんどん情報や業務が倍々ゲームで増えていきますから、余計に業務量が多くなるのは必然。 この研究は東大の西成先生の『渋滞学』で証明されているんですよね。 では、このやっつけ仕事をしないためには、さらに、人的ミスを少なくするためには?ということが重要です。 幸い、日本の学術研究は、こういうところまで研究されている方がいるんですよ。 なぜ、彼らの知恵を利用しないのか?と思います。 『仕事の渋滞 解消します』 朝日新聞出版社 西成活祐(著) 『事務ミスをナメるな』 中田享(著) 光文社新書 組織運営においては、はヤマト運輸の小倉さんの『経営はロマンだ』にも指摘されているんですが、従業員採用は「人格」「人間性」で採用するべきだということだと思うのです。 この人間性や性格、人格は、その人の生まれ持ったものですから、なかなか変えることはできません。 複雑化から単純化するには、柔軟な発想ができる人、そして、チームワークができる人ですから、人間性が大事だと思います。 ただ、仕事の能力の良し悪しだけでは判断してはいけないという指摘は、小倉さんの指摘は長年の経営の経験から発見されたのだと思います。従業員で、品格がない人、人の心を簡単に傷つける思いやりのない人、情けがない人など一緒に働きたくはないですよね。 人徳や信頼があって、あえて、厳しい教育をする方はありだ思いますが、それこそ、コミュニケーション能力や信頼を構築できる人しかできません。 全国大会で優勝するような学校では先生が生徒に厳しい教育していますが、最後の最後は生徒さんに感謝の気持ちを伝え、自分で考える力を育て、喜怒哀楽を一緒に共有できる先生たちなのです。 そのような教育方法は、経験があるからできるのであって、自分がされたから同じように教育してもダメなのです。 組織運営とは、「人を動かす」ことはもちろん、「単純化」するためには、実は従業員に、もっと教育をしないといけません。 複雑化から単純化するためには、従業員たちの共有情報とコミュニケーションが一番重要です。 その環境整備は経営陣が作らないといけないのです。 この本では、その方法論や実践方法は書いていません。 参考になるのなら、三枝さんの書籍群、オープンブックマネージメント、リエンジニアリング革命などでしょうね。 組織をまとめるって、大変ですけど、経営は、結局「人」で決まるんですからね。 ヤマト運輸の小倉さんの経営の考え方は、今のヤマト運輸の快進撃につながっているし、その根本は「人」で成り立っているからだと私は思っています。 このように、この本を書評を書くだけで、いろいろな書籍が有機的につながるわけですね。 それだけ複雑化から単純化するにも、多くの書籍を読まないと、理解し実践できないですから。 だから、読書って、大事なんですよ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021.09.20 00:30:05
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