問いがなければ、人は何も見ていない(見えない)。
あなたはどのような問いを掲げて、教育実習を始めようとしているのだろうか。
・よい授業とは?
・よい先生、よい生徒とは?
・なぜ授業実習ではなく、教育実習なのか?
よい授業とは、の答えを見ると、新しい教育に向かっているのか、旧態依然の教師をめざしているのかがわかる。例えば、「わかりやすく教えている授業」という答えは後者である。「生徒の興味関心を引き出している授業」も後者。なぜならば、主語が教師だからである。これからの社会に求められているのは生徒主体の学びである。生徒を主語にして、この問いに答えてみていただきたい。
「伝える」ではなく「伝わる」ことが大切。「動かす」から「動く」ように工夫するのが教員のつとめである。
・オンラインの時代に、なぜ学校に行かなければならないのか?
学習塾は現在の学校の弱みを突いてくる。ある学習塾は次のようにアピールしている。
「今の学校は“わかる”ことまでしかやりません。“やってみる”から“できるようになる”までは放棄している。それができるのはウチの塾です。完全個人指導で、できるまで指導します。できなければ次に進めることはしません」
これからの学校は、わかる~やってみる~できるようになる~活用できる、までをパッケージとした教えと学びのデザインをする必要がある。それは探究なしには不可能だろう。
・学生生徒と教師はどう違うのか?
バスでいうと、今までは乗客だっただろう。それが今度は運転手であり、整備士であり、管理者であり、切符販売員になるということだ。与えられるものから、与えるものへの転換である。全く見える景色が変わるだろう。立場が変われば当然問いも変わり、気づきも変わるだろう。それが実習の目的なのだろう。
立場が変わるというと水平移動のように思われるかもしれないが、重要なのは垂直異動である。視点を上げなければ全体を俯瞰できないからである。いわゆるメタ認知能力を発揮しなければならないということである。今までは「落ち着かないなぁ」とぼやいていた人が、そんな自分を客観視して「いま、何をすれば落ち着くかがわからない状況にいる」と分析できるようになる、それがメタ認知である。見えないかもしれないが、まずは視点を上げるトレーニングをしてみよう。