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![]() 今年は、山のドングリが不作だという。 山荘の道路沿いの土手に、16年前世田谷区の公園から拾ってきて蒔いたクヌギのドングリが芽生えて幹の径25cmにも成長した。 昨年はかなり実を着けたが、今年はドングリが見えない。 北杜市から昨日は竹宇の甲斐駒登山口辺りに、今日は清里にツキノワグマが出たとの一斉メールが入った。 クマも冬眠前の体力を付けるための餌探しで大変なのだろうが、里へ出てきて不用意に人と遭遇して傷害事件を起こさないで欲しいものだ。 クマやリス・カケスなどの動物が好んで餌とするドングリは、ブナ科のカシ・ナラ・カシワなどのコナラ属凡そ20種の樹木に生る果実の総称である。 万葉集に、クヌギのドングリの殻斗で染めた衣に寄せた恋歌がある。 美しく若い女性より共に慣れ親しんできた糟糠の妻の方が最も勝ると詠んだもので、「紅は うつろうものぞ 橡のなれにしきぬに なほしかめやも」(紅で染めた衣はきれいだが、すぐに色褪せてしまう。橡で染めた衣は地味でも、慣れ親しんだ衣服に勝るものはない。)である。 万葉集4109大伴家持 つるばみ(橡)は、クヌギあるいはそのドングリの古名である。クヌギのドングリは、径2cmとドングリの中でも大きな球形で半分は殻斗に包まれている。 ドングリは縄文時代から人の食料とされてきたが、タンニンやサポニンを大量に含んでいて渋抜きをしないとそのままでは食べることができない。 木の名前の他にドングリあるいは殻斗の煮出し汁で染めた、衣服や色のことも「つるばみ」と言われる。 ドングリや樹皮・葉より殻斗から最も色素が出るとされ、つるばみはドングリでは無く殻斗で染めたものとする解説書もある。 媒染に灰汁を用いれば薄茶色の「黄つるばみ」になり、鉄を用いたものは「黒つるばみ」と呼ばれ黒色に染まる。 奈良時代には比較的手に入り易かったため、身分の低い者が着る衣服の色であった。 平安中期になると四位以上が着る袍の色とされ、さらに仏教の広まりとともに法衣や喪服にも使われるようになって高貴な色とされるようになった。 万葉集4109の「紅は…」は33歳の大伴家持が、越中の遊女左夫流と浮気している部下の史生尾張少咋を戒めた歌である。 この後本妻が都から越中へ乗り込んできたことで、町中が大騒ぎになったとある。浮気がばれての騒ぎはいつの世でも、世間の格好の話題になる。 クヌギの名には「国木」からとする説と「食之木(くのき)」からとの二説があるが、「つるばみ」の語源については不明である。 「…ばみ」は「はむ」と同源と考えられるところから、つるには食べるに関係した意味があったのかもしれない。 「つるばみ染め」については平安時代中期に編纂された「延喜式」にすでにその記述が見え、古くから染料とされてきたことが分かる。 つるばみに「櫟」「椚」「橡」の字が当てられることもあり、他の樹木の名前と混乱錯綜している。「和漢三才図絵」では、「久奴木」「和漢薬」では「都留波美」と書かれている。 花言葉 おだやかさ 5月に栗の花のように垂れ下がって咲く花に、なぜ穏やかという花言葉がついたのか理解を超えている。 万葉集には4109の他に、橡が出てくる恋歌が六首ある。 橡の衣は人皆事なしと言ひし時より着欲しく思ほゆ 1311 橡の解き洗ひ衣のあやしくもことに着欲しきこの夕かも 1314 橡の袷の衣裏にせば我れ強ひめやも君が来まさぬ 2965 橡の一重の衣うらもなくあるらむ子ゆゑ恋ひわたるかも 2968 橡の 衣解き洗ひ真土山 本つ人にはなほしかずけり 3009 橡染めの布は麻衣なので、洗うと硬くなる。そのため、砧で「再打ち」するのだという。 (橡の衣を解いて洗うとき又打つように、古女房が最も良いものです。) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2016年10月28日 17時04分52秒
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