一代で年商6,000億企業を創り上げたニトリの超ファン創り経営
新型コロナの影響で、いま大手企業の赤字転落が連日のように報じられています。しかし、そんな状況の中にありながら、怒涛の快進撃を続ける企業が「家具の安売り王」との異名を持つ、日本最大の家具チェーン「ニトリ」さんです。名だたる企業の業績が悪化する中にあり、なぜニトリさんは、33年連続で増収増益を果たし、34年目の増収増益も確実視される好業績をキープできたのか?快進撃の裏にあった...ニトリさんの意外すぎる大変貌をカンブリア宮殿が独占取材しました!当社はニトリさんと販促のお仕事をさせていただいており、その中でニトリさんのこだわりの強さ、検証力など様々な素晴らしい点に触れているのですが、カンブリア宮殿を見て、よりその認識が深まりましたので、コロナ禍でも快進撃を続けるための学びの機会としてご紹介します。2020年2月現在、従業員数:14,337人、売上高:6422億円をあげる企業を一代で築き上げたのが、現会長の似鳥昭雄さんです。似鳥会長が常におっしゃっている言葉が、『無理や不可能にこそチャンスがある!』『他社の5年先を走り続けろ!』だそうです。東京・北区のニトリ赤羽店。最大の魅力はやはり安さです。女性2人組が買っていた「レディース木製ハンガー」は、5本セットで399円。特にお気に入りが滑りにくい素材で出来た「すべりにくいアーチ型ハンガー」(3本セット304円)だそうです。家具や日用品はもちろん、ベビー用品も売っている。ベビーカーは7546円と破格。さらにオリジナル家電のコーナーでは外からスマホで操作できるエアコンが4万9900円(6畳用)です。だが最近のニトリさんは安いだけではなく、商品に機能性という新たな武器が加わっています。例えば「Nグリップ掛け布団カバー」(2027円、シングル)には、普通の布団カバーには付いている「取り付け紐」が付いていない。その代わりに、カバーの内側に超極細の繊維でできた布が付いていて、この摩擦力の効果で、マジックテープで付けたように布団がずれなくなります。「こんなものが欲しかった」という客の気持ちに応えてくれる機能的な商品を続々開発し、ニトリらしいお値打ち価格で販売しているのです。「お値段以上の機能性」こそ、今のニトリさんの基本戦略なのです。「『安かろう』ではダメで、プラス機能性が付いてくる。今はそういう世の中です。お客が希望するのであれば機能性商品をつくらなければならない」と似鳥会長はおっしゃいます。そんなこだわりを持つ似鳥だからこそ生まれた大ヒットシリーズが、客目線に立って求められている機能をプラスしたワンランク上の「Nシリーズ」。ニトリの「N」をあえて冠した絶対の自信を持つシリーズです。その代表が、寒い冬向けの大ヒット商品「Nウォーム」。汗などの湿気で暖かくなる繊維を使った寝具のシリーズで、この機能性が受けて年間売り上げは200億円。真逆の夏向け商品、触るとヒンヤリする「Nクール」も年間200億円。さらにはマットレス「Nスリープ」も年間200億円だ。最新作では中のコイル1本1本を細くし、これまでの3倍の量を入れた。これで寝そべった時の体圧をより細かく分散できるようにしました。こうした大ヒットを生みながらニトリは33年連続増収増益。2020年はコロナの影響から休業期間があったのに売り上げは過去最高7000億円を超える見通しなのです。ニトリ赤羽店の一角に洋服売り場があります。中高年の女性から「服を買う店がない」と聞き似鳥会長が作った婦人服ブランドでターゲットは30代から60代の女性です。最大の特徴は、多くの大人の女性が抱える体型の悩みを解消してくれること。例えば縦にも横にも伸びる素材を使った「マジックベルトストレッチパンツ」(2990円)。穿いた時に楽なだけではなく、下半身のラインがスッキリするデザインで、もちろんどれもニトリさんならではのお値打ち価格です。客の喜ぶ商品を作って買ってもらう。似鳥さんはそれをずっと続けてここまで来ました。1967年、札幌の1軒の家具店からスタート。開業当時はまったく売れず、少しでも安くして客を呼ぼうと奔走。そこで始めたのが、問屋を飛ばして中間マージンを省く、メーカーからの直接仕入れでした。「メーカーに買いに行っても断られるんです。あんたのところには売れない、と。問屋は何十倍も買うのだから、と」問屋から圧力がかかった。それでも似鳥さんは新たなメーカーを探し出し、夜中に商品を運び出すのだが、すぐにばれる。次のメーカー、次のメーカーと列島を南下し、ついに国内で仕入れ先がなくなると今度は海外へ。1994年にはいち早く工場を作って自社製造に乗り出します。ひたすら安さを求め、手を打ち続けた結果、ニトリは企画から製造、物流に小売りまで一貫して行う世界でも例を見ない家具チェーンとなったのです。しかしその後、ある出来事がニトリさんに変化をもたらします。2008年のリーマンショック。アメリカから世界へ金融危機が広がり、日本では製造業がバタバタ倒れ、部品の調達コストがアップ。だがニトリさんは、値下げキャンペーンを断行。2年半に渡って4000以上の商品を値下げした。するとニトリさんには客が殺到、独り勝ち状態となったのです。しかし、その一方で客層には変化が起きていました。「年収800万円以内がターゲットだったのが、年収600万円以下の人は来ても700万円~800万円の人が来なくなっていたんです。もっと品質の高い物はないかと言われ、どうすればいいか1年ぐらい悩みました」(似鳥)このまま値下げを続ければ「安かろう、悪かろう」というイメージが定着してしまう。そこで似鳥さんは方針転換を決意。安さ一辺倒から、今まで4番目においていた「品質」を2番目に格上げし、重視すると宣言したのです。商品作りに妥協せず、完成した商品でも、もう一度1からチェックする。こうしてニトリさんは品質向上に挑み続けています。ニトリさんには巨大店舗と並行してもう一つ増やしている販売チェーンがある。駅ビルなどに入っている、「デコホーム」だ。店内には生活雑貨がずらり。大型家具は置かず、キッチン用品やお掃除グッズなどに特化したいわば「ミニ・ニトリ」です。例えば「簡単取り込みハンガー」(1017円)は、雨で部屋干しとなっても、引っ掛ける部分がありいろいろな場所にかけられます。使い終わったらペシャンコになる「たためるバケツ」(1518円)は場所をとりません。「ちょっと便利な商品が、ぱっと寄って買える店」として重宝され、都心を中心に106店舗を超えるまで拡大しました。しかしこの「デコホーム」の売り上げはここ2年、伸び悩んでおり、上向かない業績についに似鳥会長自ら店舗改革に動き出しました。さいたま市のルミネ大宮店に出向き、問題点をチェック。足を止めて見入ったのはルームウエアの売り場。ライバル店と差別化するために作った「デコホーム」のオリジナル商品だが、商品の撤去を指示。ニトリ本体では売れている商品でもお構いなし。すごい速さで判断し、撤去を指示していきます。「一番売れているのは家庭用品や厨房用品。その品数を増やしたほうがお客様に喜ばれる」(似鳥)売れない商品を一旦減らし、その分、売れ筋の品揃えを増やそうと言うのです。「デコホーム」はライバルとの差別化で、様々なジャンルのオリジナル商品をどんどん作り、いろいろな物を置き過ぎるようになっていた。結果、肝心の売れ筋であるキッチン用品などの品揃えが悪くなり、売り上げ低迷という悪循環になっていたのです。「自分たちの判断で優先順位を決めてしまう。それは間違っている。自分の考えをゼロにして、まず『お客がどう思っているか』なんです」(似鳥)似鳥会長からの大号令を受け「デコホーム」全店で、商品の大幅入れ替えが行われました。以前は15種類しかなかった包丁は35種類まで増えた。やはり売れ筋の季節の寝具売り場は2倍の広さに。掃除用品売り場は3倍まで拡大、品揃えが段違いに良くなりました。この改革により、11月の「デコホーム」の売り上げは前年比で20%もアップしたのです。『先客後利』この言葉が似鳥会長がずっと大切にして、実践してこられたことです。まずお客様を喜ばせ、徹底的にファンにする。安さと品質を実現する製造物流小売という世界初、他に例を見ない業態でこれからも快進撃を続けて行くはずです。