お子さんを守るための教室(2) 1年1ミリでも危ないか?
1年1ミリの法律の規制もありますし、1年5ミリ以上の被曝は白血病に対して労災が認定されるのに、1年20ミリとか100ミリと違法行為を勧める知識人もいて、困りものです。でも、反対に1年1ミリでも心配しているお母さんも多いので、ここで子どもを守るための考え方をまとめました。
まず、基礎知識として頭に入れなければならないことが3つあります。第一は、被曝は4階建てということです。一階が自然被曝(1.5ミリ)、二階が医療被曝(2.2ミリ)、三階が核実験被曝(0.3ミリ)、そして四階が原発被曝(1ミリ)です。
原発が爆発しなければ、普通の人は1年4ミリ程度の被曝をしています。この被曝がガンなどの元になるかという点については世界的にも議論があります。つまり学問的にわかっていないということです。ただ1950年に結核予防法ができて児童がレントゲン検診を受けるようになると、白血病が増えたので、検診の頻度を下げた経験があります。でもその時には一回のレントゲン検診で受ける被曝量が多かったので、そのまま直接、比較することは出来ません。
また広島長崎の被曝の例では、低線量率でも病気になっていますし、ドイツは原発からの被曝を1年0.1ミリにしています。ドイツは医療被曝が少なく、核実験被曝もほとんど無いので、自然被曝を中心として3ミリ程度でしょう。
考え方としては次のようなのが妥当です。
1) 被曝はいずれにしても危険である(法律でもそのように明記されている)、
2) 人間はどのぐらいの被曝がどのぐらいの被害を与えるか正確にわからない、
3) 当面、法の規制に基づくのが妥当。
第二には、基準値は「普通の人のうち、やや弱い人が対象で決まっていて、特異体質の方は含まない」ということです。
第三に、社会は危険に満ちあふれているので、若干の危険を承知で生活をしているということです。
このような3つのことがありますから、国や自治体は法律上の規制を守ったり、社会的に問題になるようなことにならないように注意をすることまでは出来ても、個人の特殊性や希望に全部、沿うことは出来ないということも知っておかなければなりません。
特に第三をよくお母さんが考えてあげてください。交通事故では1年に100万人以上の人が負傷します。そんなに多くの人が負傷し、時には子どもが悲惨な目に遭うのになぜ、車は走っているのでしょうか? それは車がなければ、スーパーに食料を届けることも出来ず、お米や水も運べず、宅急便もなくなり、救急車もなしになるので、犠牲を承知で自動車を走らせています。
このようなことは「メリット」と「損失」のバランスで決めていますし、それは医療でも同じです。薬も副作用があり、ワクチンは危険でもあります。インフルエンザがはやりそうな時期に学校に行かせること自体も問題です。そこのところをどの程度のバランスでやるかということです。
1年1ミリは「被曝をするのだから、少し白血病やガンが出るが「我慢できる範囲」」と言うことで決まっています。
でも、個人によって「我慢できる」というのは違いがあるので、「まったく影響がないとできる」というレベルとして「クリアランスレベル」を決めています。この場合1年に0.01ミリシーベルトですが、瓦礫の管理などは出来ますが、個人の被曝ではやや非現実的です。だから、「ある程度の覚悟」が要ります。もし覚悟をしなければ、自然放射線の他、医療も受けず、原発も全廃する必要を生じます。
私はこの際、原発を全廃し、医療の被曝も減らして、しばらく様子を見ることと、被曝の医学を進めることが最善と思っていますが、現に福島原発が爆発したので、過去のことは仕方が無いと思い、子どもに対してはぜったいに1年1ミリを守るという決意を大人がする必要があると考えています。
それぞれ1年1ミリの意味をお考えになり、ご判断ください。1年1ミリ以下は個人で判断するしかないのです。
(平成24年5月15日)
「mothertdyno.94-(7:23).mp3」をダウンロード
武田邦彦
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最終更新日
2012年05月19日 23時17分16秒
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