シリーズ・食材汚染(2) 農作物(主食を除く)
「tdyno.43-(10:22).mp3」をダウンロード
シリーズ食材汚染の第二回目は農作物ですが、お米、小麦、大豆などのやや主食のものは別にして、その他の農作物をまず整理してみます。今回も基礎編、経過編、そして現在編の三つで書いてみます。
【基礎編】
原発事故の最初はほうれん草などの葉物野菜が汚染されましたが、空から放射性物質が降ってくるので、当然でもあります。土の上に落ちた放射性物質はその後、徐々に土にしみこんでいきます.
そうなると事態は複雑になり、土の表面から、田んぼのようにドロと一緒に移動するもの、いったん葉についてそれが落ち葉となり次第にしみこむ・・様々です。また事故当時「ひまわりは放射性物質を吸い込む」ということで大臣まで出場して田んぼにひまわりを植えたことがありましたが、この例でもわかるように「どの植物でも同じようにセシウムを吸う」というのではなく、吸いやすいものと吸いにくいものがあり、それが汚染の程度の違いになります。
つまり個別の農作物でかなり違うので、あまり一般的な傾向を考えない方が良いと思います。ただ、「植物は肝心なところにセシウムやストロンチウムを必要とする」ということはあり、たとえば「お米の粒」ですと、実の部分より胚の方が高く、野菜の葉っぱより芽や実に貯まりがちです.果物が一般に高いのもそれが原因していると考えられます.
つまり、単に糖分や炭水化物の場所は「栄養の蓄積場所」ですが、胚や種などはそこから発芽したりしますので、金属元素が必要だからです。
【経過編】
柑橘類やキノコなどが2011年の最初の頃からズッと汚染されています。柑橘類の樹木についたものは樹木自体が多くて何年も実をならしますし、多年生と同じで影響が長く続くと考えられます。またキノコなどは母体の樹木や育てるための糠などに放射性物質が含まれていて経済的な理由や味などからすぐには新しい物に変えないという事も汚染の原因になっているようです。
お母さんの中には1年半になってやや疲れた人もおられますが、事故直後に被爆したお子さんが多く、3年が一区切りですからもう少し頑張ってください。
注意を要するのは「最近、汚染が少なくなってきた」という情報です.もちろん事実、変化しているのですが、放射性物質は「消えない」ということです。あるものは野菜やトラックのタイヤなどに付着して日本中に運ばれたり、洗浄した水が川から海に流れたものもあります。
そうすると、食材の汚染が減っても空気中に飛散しているとか、西日本の食材がわずかに汚れてきているなどが起こります。全体として子どもの摂取量が減ったかどうかは直ちにはわからないのです.
今のところまだ被曝と健康の関係が不明ですから、あまり急いで結論を出さずに「緩く注意する」という状態が必要と思います。
【現在編】
1) ほうれん草などの葉物野菜の汚染は低下していますが、福島、茨城などの「再飛散」の問題を抱えています。
2) 果樹は全体的に汚染されています.柑橘類がもっとも危険で、栗、ぎんなん、柿、桃、キューイフルーツなどです。樹木に実をならす果物は常緑樹が多く、樹木自体が汚染されたので、汚染は長く続きそうです.
3) タケノコ、キノコ類(干しシイタケも)、ハーブ、山菜類などの汚染が続いています。キノコは工場で作られているのが普通ですが、それでも汚染が多く見られます.栽培に使っているものが汚染されているからです.来年ぐらいから少しずつ改善されるのではないかと思います。また多年生草は汚染が消えないようです。
4) レンコンは泥状の土地に植えるので、その自らセシウムを吸収しているようで、サツマイモは酸性土壌なので、これもセシウムをある程度溶かしているようです。コメもレンコンに汚染の傾向は似ています.
5) カボチャも野菜と言えば野菜ですが、実と種ですから汚染が残っているようです。
先回の牛乳のところでもお話をしましたが、「その時に汚染されているものを避ける」ということで「平均値として安全な領域になる」ということを使うのがもっとも良いと思います.
また、「余り周囲に気にしている人がいない」というのが心理的な負担になっている人も見られますが、放射線の影響がハッキリするまでは、注意をして生活をし、被害が少なければゆるめ、被害が大きくなるようならさらにいっそう注意する事になります。
今のところ、甲状腺の異常の問題がもっとも大きいのですが、それもハッキリはしていません.また白血病が初期に出るのですが、統計的な結果はまだ出ていません.外部からの被曝は一段落していますし、水は綺麗になっていますから、今は食材だけに注目し、この機会に少し料理を考えてみたりすることによって「災いを転じて福となす」ことも少しはできます.
(平成24年12月9日)
武田邦彦