昨日、不思議な夢を見た…。48
久しぶりに日本映画を見た…。
「わが母の記」井上靖氏の小説を原田眞人氏が監督脚本を手掛けていた。
この原作を書いた井上靖氏の母御のことを書いているが母と子の、その一族の血という問題を絡めていて喧噪であっても情というものを感じ取らせていた。
まだこのような映画が作られていることに驚き感嘆した。映画製作に携わった人たちの良心を見せられた。このような映画が製作できる土壌があることを喜んだ。
そして、まだまともな俳優がいて演技が観る人の心を揺さぶることも感じた。
タイトルバックが流れ、俳優は何人か知っている人がいたが、制作スタップの中には一人も記憶する人がいなくなっていた。時は流れ私はその忘却の中にいることを知った。
皆さんも時間があれば見ても時間の浪費にはならないと思う。GYAO無料映画サイトで見られる。
流行作家とその母の物語だ。母は認知症が出て来て奇行を繰り返す、家族はそれに振り回される、その認知症の母の言葉の中に昔のわだかまりを説くカギが、その真実が明かされる過程は脚本監督のお手柄である。決して安物ではない。井上靖氏の原作を読んでいないので何とも言えないが、ここまで映像を作り上げる腕と才覚には狂喜乱舞をさせられた。
秀逸は役所広司である。作家が持つ風貌と気骨さと細やかな愛を併せ持った演技だった。それに宮崎あおいの娘役はこの人しかできないだろうと感心させられた。母親役の樹木希林さんは、爾来老け役と個性的な役どころは演技がたやすいということでこの女優なら楽にこなせていた。また、わきを固めていた俳優の確かな演技、見せ場と落としどころを知っていた。カメラの自然を切り取る目はこれもほめなくてはなるまい。奇をてらったものでなくアップとロングを巧みに使い分けて流れを止めることもなかった。
作家は母に捨てられたと思い母に懐疑的な思いがあるが、
「わが子の中で一番強い子を日本に残した」台湾に赴任した夫の所へ向かう戦時中の家の血を絶やさない思いを知ったときの激しい後悔と愛情を気づかされる作家、また、幼い頃書いた詩をいつも持ち歩いていた母を知り母の思いの深さを知るところなど今の作家に書けるはずはない。深い思いは決して表に出したらそれは安物に代わることを教えられる。
戦前のあった日本の伝統、風習も的確に表現され、昨今の時代考証、衣装考証のなさにうんざりさせられていた私は目を見張った。
この映画に引き込まれ、まだ日本に映画があることを確信した。
今私が書いているテーマとダブるところもあり影響を受けないように注意が必要であることも感じた。
全ての芸術作品はそれに接した人たちを生きていてよかったと思わせなくてはならない、それが作り手の信念でなくてはならない。決して空振りをさせてはならない、その審問で想像してほしい。
私が夢を大切にといつも言うが、そう簡単に夢が実現しないから夢が必要なわけで、それは心の安らぎでもありゆとりがあって初めていい夢が見られるということなのです。