O社・社長解任騒動について(3)
O社の開示情報から想像したこと。事業評価力の乏しい、ファイナンスの知識、ノウハウのない、一部の役員主導でババを掴まされた、というところが実態ではないかと思える。ファイナンスの専門家風な人物にもっともらしい事を吹き込まれ、信じ込んでしまったのではないか。疑惑の買収関連を実施していた07年~08年当時のO社は営業利益も1000億円、時価総額も1兆円を超え、この勢いがずっと続くと錯覚し、役員達も相当気が大きくなって、リスクテイカーになっていた、と想像できる。 常識のある社員、役員もいるだろうが、このような提案が通ってしまうとうことは、残念ながら企業統治が機能していないことになる。投資家であれば誰でも経験あるように、大きく儲かると、つい気が大きくなって、いつまでも上昇トレンドが続くと錯覚し、よりリスクの高い取引に手を出してしまうのは普遍的な人間の行動である。会見でも会社側は買収案件の仲介者は役員の個人的なつながりで選定され、複数と比較検討していない、と言っているので、この仲介者のいいなりで価格交渉もそこそこに言い値で買っていたと思われる。今回指摘されているような、判断の失敗による損失が出れば、世間の常識では経営陣は辞任するべきであろうが、同社の社長にこのような常識が備わってなかった。そして、この点を常識を持ち合わせている元社長W氏に指摘され、辞任を促され、元社長K氏は冷静さを失い、保身のために突然の解任に至ったということだろう。ちなみに、粉飾決算があったのではなどと一部で言われているが、過去10年の同社の決算を見れば明らかな様に、頻繁に多額の特損を計上しており、粉飾とは真逆で、決算処理としてはいたって正直だと思われる。粉飾決算というのは、決算を良く見せようとする行為であるから、この点で言えば、見当はずれである。過去の財テクの失敗をM&Aでごまかす?と言っている人もいるが、財テクの失敗は既に過去の頻繁な特損で適切に処理されていると思われるし、こんなわかりやすい取引を会計士が見逃すはずもない。以下はHPで確認できる、過去11年間の特損の内容である。およそ製造業とは思えない、吐き気のするような多額の企業投資関連の損失を毎期繰り返していることがわかる。‘00年 金融資産整理損 16,996‘01年 投資有価証券評価損 417‘02年 投資有価証券評価損 8,216 出資金評価損 2,715‘03年 投資有価証券評価損 7,526 出資金評価損 914 関係会社整理損 771‘04年 投資有価証券評価損 273 出資金評価損 655 関係会社整理損 133 スワップ清算損 5,447‘05年 投資有価証券評価損 465 関係会社整理損 25‘06年 投資有価証券評価損 870‘07年 投資有価証券評価損 1,756‘08年 投資有価証券評価損 1,491‘09年 投資有価証券評価損 15,797 投資有価証券売却損 1,053 のれん償却額 76,201 ・・・国内3社ののれん減損含まれる 前期損益修正額 15,516 ・・・ FAへの報酬‘10年 投資有価証券評価損 6,080 投資有価証券売却損 393 のれん償却額 2,334 ‘11年 投資有価証券評価損 1,054 投資有価証券売却損 3,083O社は映像事業の弱さ、リスクが取り上げられるが、とんでもない、過去の映像事業の赤字がかわいく見えるほどの毎年の損失である。映像事業の赤字が膨らんだ‘05年、‘11年はいずれも事業担当役員が責任を問われ、辞職に追い込まれているが、このような多額の損失を繰り返している財務関連の役員は誰ひとり責任を取ってないことからも、同社の企業統治上の異常さがわかる。