宮城まり子
日経新聞最終面の左隅を飾る連載モノ。それは「私の履歴書」だ。各界の有名人がこぞって自らの半生を綴るコーナーは一か月入れ替わりで、時に面白く、時に退屈だ。過去に印象に残っているのは東京ディズニーランドを立ち上げたオリエンタルランドの創始者(名前忘れた)で、中盤ディズニーランド起業にまつわる個人的な恨みつらみを実名入りで炸裂させていて、「日本を代表する経済紙にこんな私怨じみた文章書いてイイのか?」と、野次馬としては非常に面白かった。ナベツネの回は、「ああ、やっぱり所詮は品性の貧しい人なんだなあ」と言う印象が強かった。3月の担当は慈善家の宮城まり子さん。最初のうちは彼女のメルヘンチックな文体にヘキエキしたものだ。「『まりちゃん、がんばるのよ』と、私は自分に言い聞かせました」みたいな、始終電波が飛んでるお花畑な感じの不思議ちゃん文体で、正直「なんじゃこのオバハンは?」と思っていた。でも、回も中ごろに入って身体の不自由な子供たちのための施設を建設するくだりになると、なぜか涙なくして読めなくなってしまい、ものすごく困ってしまった。この、終始メルヘンチックな文体を繰り出すオバサンは、日本に前例の無い偉業を成し遂げながらも「子供たちがみんな笑っていられますように」なんてことを普通に言ってのけちゃうわけで、彼女に関わった皆さんがこの毒気に当てられて彼女の希望を実現しちゃったんだろうなと思うと、なんていうか非常に感慨深い。なんというのかストレートに子供っぽい文章を読むとなぜか感動し、会社で、新幹線で、飛行機の中で、3月の「私の履歴書」を読んで泣けてしまって困った人は多いと思うが、私もその中の一人だ。もうあと数回で終わりだが、読んでない人はもったいないことをしたと思う。