カツラー本二冊
小林信也氏の著書「カツラー危機一髪」と「カツラー探偵が行く」を立て続けに読んだ。数年前に「カツラーの秘密」という氏の著書を読んで、画期的な内容に胸のすく思いがした。大手メーカーの営業姿勢は押し売りまがいで売らんかなのゼニゲバ体質であり、究極まで進んでいると勝手に想像していたカツラ装着方法は、なんと残った自毛にパッチンとクリップで取り付ける方式などという非常に原始的な方法だったのだ!おそらくこの「カツラーの秘密」という本の存在はカツラ業界にカナリのインパクトを与えただろうと思う。今まで横のつながりの薄かったカツラ利用者同士(お互いばれたくない余り、なかなかカツラ利用者であることを打ち明けたり相談したり出来ない)がこの本を通して強力な情報を得たことで、大手もあまりアコギな商売は出来なくなっただろうなと期待したが、今回読んだ続編二冊を読むと、より手口が巧妙になっているのかもなという気もしている。「カツラー探偵が行く」は、非常に真面目なカツラカタログの趣であるが、カツラ会社とのトークバトルみたいな面もあって興味深かった。一方「カツラー危機一髪」は「カツラーの秘密」で筆者がカツラ愛用者であることを公言して以来広がったカツラ利用者の情報が集められ、より広いエピソードで構成されている。「カツラー危機一髪」の最後にはこんなアドバイスが書かれている。「カツラメーカーを3社以上訪ね、現物を見せてもらい、実際に着用している人に会わせてもらって、触ったりもみくちゃにしてみた上で試着もさせてもらうことが大事だ。高価な買い物(カツラは50万くらいする)をする前には当たり前のこういう事を必ず要求する。その過程でメーカーの姿勢がよくわかる。この程度のことをさせてくれないメーカーは候補から外した方がいいと思う」これは非常に重要なことだ。セールストークの中ですぐに契約を迫ったり、お客を不安にさせたり、お客の意見を真っ向から否定して優位に立とうとするようなやり方は悪徳商売の最たるモノだ。今は無き「英会話のノガ」も、まったくこれと同じやり口だった。カツラに興味ある人はもちろん、人の痛みを知る上でも貴重な本。