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カテゴリ:追原騒動記
昨日に続いてNさんのメルマガをお借りして。
週刊ポストの続きです。長いのですが台風が接近中でお天気悪いので、お時間ある方は読んでください。 週刊ポスト =●「田」が45倍、「畑」が82倍の値に 問題は萩原氏個人ではない。彼は官僚とゼネコンに取り込まれていく中止反対住民たちの「象徴」である。さらにいえば、住民・地権者とダム推進派との蜜月を示すものはこのゴルフコンペだけではない。 計画では、八ッ場ダムが完成すれば群馬県長野原町の316ヘクタールが水没し、国交省は周辺地区を含めて430ヘクタールの土地を買収する。移転を迫られているのは約470戸である。 その移転補償で地元にどれだけのカネが撒かれたのか。本誌が入手した国交省関東地方整備局の極秘資料『八ッ場ダム建設事業に伴う補償基準』には、A4判24枚にわたって補償額の詳細が記載されている。 一読して驚く。 別掲の表にもまとめたが、まず土地の評価は「宅地」「雑種地」「田」「畑」「山林」などに分類され、それぞれ等級が分かれている。 宅地の補償基準額は1等級が1m2=7万4300円。6等級は2万1100円と評価されている。ところが、長野原町の公示地価(09年)は、住宅地の最高額で1m2=2万1400円(最低額は4890円)なのだ。1等級と評価された土地は公示地価の3.5倍で買い取られる。 山奥の土地が、群馬県の県庁所在地・前橋市の1等地の住宅地並みの評価となっているのである。 農地や山林はさらに“水増し”されていた。農地・山林は公示地価が調査されていないため、相続税などの基準となる相続地価(財産評価基準)を算定して比較した。ある水没地区の田を算定すると、最も高い土地で1m2=335円、畑は181円である。 ところが、国交省の農地の補償基準は、「田」は1m2=1万9400円(1等級)~1万5300円(6等級)であり、最も安い6等級の基準で買い上げられたとしても相続地価の45倍。「畑」も同様に6等級(1m2=1万4800円)評価でも相続地価の82倍だ。 庭木や樹木の補償基準は種類と根回りや高さで違う。根回り80センチの黒松は1本約20万円、りんごの木は「樹齢10年」が1本約3万1000円、まだ実のならない「樹齢1年」でも1本4580円支払われる。猛宗竹の竹林は1があたり1240円。裏庭に1000坪ほどの竹林があれば100万円になる。その裏庭に筍(たけのこ)が生えるなら「天恵物補償」として119万2000円が追加される。 地主にとって、ダム建設は先祖伝来の土地を追われる悲劇である。 しかし、その一方でいったん移転を決断すれば、山奥の土地が“カネのなる木”に化けることもまた事実なのだ。 「土地の査定は現状で補償されることになっているから、休耕地を調査の前に耕したりしましたよ。でも、一般の農家には現状は水田なのに畑に格下げされた人もいる。逆にダム推進派の中には、30年近く放置して木が生えている荒地を水田と査定されて高く買い上げてもらった人もいます」(地権者の一人) 国交省はまさに札束で頬を叩くようなやり方で住民を“懐柔”していったことがわかる。 資料には、引っ越しの費用まで詳細に取り決められている。 家具等の移転補償は住居面積などで決められ、100m2の家の場合は56万6000円。立型ピアノは5万8000円が加算される。さらに神様と仏様にも補償金が出る。仏壇「大」が8万1000円、神棚「大」は4万3000円の移転補償に加えて、読経供養などのための「仏壇弔祭料」が25万8800円、神棚の「遷座祭典料」が16万1000円である。 また、引越しの挨拶のための「移転通知費」が1世帯3万5300円。こうした引越し費用だけでおおよそ1軒100万円は下らないだろう。 ちなみに群馬県の大手引っ越し業者によると、実際に住民の引越しにかかる費用は、「一戸建ての4人家族の県内移転なら19万円。ピアノは別料金だが、同じトラックで運べば縦型で2万円プラスになります。仏壇、神棚の特別料金は頂きません」という。 もちろん、引っ越しの前に新居が必要だ。 住民が補償金などで代替地など別の土地に家を建てるとなると、「建築祭儀費」の名目で「地鎮祭」に11万4300円、「上様式」は41万4000円、完成時の「建築祝費用」が29万4100円で合わせると82万 2400円出る。それに新築や引っ越しの間は仕事に支障が出るだろうと、「就業不能補償」も支払われる。 だから地元には、「ダム御殿」と呼ばれる補償金で建てた立派な邸宅がある。 一体、国交省はこんな補償額をどんな根拠で計算しているのか。 ●補償は「ブラックボックス」 八ッ場ダムの総事業費のうち、水没地区の住民・地権者への補償金や用地買収、代替地造成などの生活支援になんと1236億円が投じられている。 そのカネは国民の税金だ。 しかし、国交省は「個人情報」をタテに補償の実態を国会にも決して明らかにしようとしない。同省が衆院国土交通委員会の委員に提出した『補償基準』の資料は金額の欄がすべて黒塗りされていた。 役人は補償基準を文字通りブラックボックスにすることでダム建設に協力的な住民に査定を甘くして“アメ”を与え、建設反対派には厳しくして切り崩してきた。そのために補償基準は長くトップシークレットだった。 長年ダムに沈む町の住人たちと接し、『八ッ場ダム──足で歩いた現地ルポ』(明石書店刊)の著者である鈴木郁子氏がいう。 「01年に補償基準の調印式が行なわれた後、すぐに契約して移転していった人たちにも補償基準に基づく額が支払われています。また、別枠で下流都県から支払われる感謝の意味での助成金がありました。この金額にも各自の資産に応じた基準がありますが、1軒につき平均で700~800万円ほどのお金が支給されると噂されました。一方で、現地にはまだ契約していない家もあり、補償金を一銭も受け取っていません」 公共経済学が専門の藤岡明房・立正大学経済学部教授は、八ッ場で起きているのは日本の公共事業政策の縮図だと指摘する。 「国交省がダムや道路などを造る時の住民交渉の手法は、住民の中に入り込み、業者などを使って接待を繰り返し、補償金額や地元対策費を吊り上げて反対派を転ばせる。それを全国でやってきたわけです。その結果、事業費は当初計画からどんどん膨らんでいる。 八ッ場の事業費も2倍以上になっています。そうやって、補償金で焼け太った住民のダム御殿と呼ばれる家が全国にできた。生活の場を奪われる住民に補償するのは当然だが、果たして金額が適切なものかどうかは一切検証されていない」 政治家と役人、業者、一部の地権者が手を結んだ“血税ムダ遣いカルテット”による公共事業のやり方は、国民への「背信の構造」そのものなのだ。前述の「ゴルフコンペ」はその縮図といえるだろう。 「脱官僚依存」「税金の無駄遣いをやめる」と約束した鳩山政権は、ダム推進派の官僚や業者らが書いたシナリオに怯(ひる)まず、血税垂れ流しの連鎖を断ち切らなくてはならない。= ☆以上です。週刊ポストさん、よく調べて書いてくださいました。 前述のゴルフコンペの萩原氏は、他の住民の移転先宅地の造成も進んでいないなか、真っ先に立派な御殿を建てました。 この10年の動き以前、60年近く前から、国が税金を垂れ流してきた現場が八ツ場なのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.10.07 09:31:40
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