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地球人スピリット・ジャーナル1.0

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2009年4月1日

地球人スピリット
・ジャーナル2.0


へ引越しました。

2007.02.18
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カテゴリ:アガルタ

地球人スピリット・ジャーナル2.0につづく



『アンダーグラウンド<1>』より続く

『アンダーグラウンド』  村上春樹 1997/3 講談社

<丸ノ内線(荻窪行き)>

 の本は、地下鉄サリン事件の丁度2年後、1997年3月20日にでている。奇しくもというべきか、必然というべきか、丁度同じ日に、島田裕巳の
『宗教の時代とは何だったのか』がでている。まさに、一つの事件を裏と表から見ていると言っていいだろう。島田のほうは、不用意に麻原集団に近づいてしまったために、自らに降りかかってきた火の粉を払うのにせいいっぱいで、とてもとても、「被害者」側たちへの配慮などしている暇がない。まず自分が逃げ出すのがせいいっぱいだ。殉死せよ、とは言わない。割腹せよ、とは言わない。でも少なくとも、島田のああわてぶりと、自己弁護の巧みさに、決定的な人間としての不足を感じるのは、私ばかりだろうか。

 村上については、私は多くを知らないが、少なくとも、麻原集団との距離を詰めていく必然性はとくになかっただろう。すくなくとも、この地下鉄サリン事件が起きなければ、外国暮らしが長いとも言われる村上だけに、麻原集団の国内の活動にすら十分な知識はなかったかも知れない。だが、たぶん、いわゆる<小説家>の勘で、村上は、この地下鉄サリン事件に迫った。しかも、手法は島田には思いつかない手法だった。

 上は、数千人を超える地下鉄サリン事件の被害者のひとりひとりの姿を追った。しかも、それはフィクションという姿をとらずに、膨大な取材と編集作業が必要なノンフィクション的な切り口でこの事件に食いついた。先日読んだ
『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』 がでた頃、村上はこの「アンダーグラウンド」の構想を練り、取材を続けていたのである。その作品としての出来栄えとか、資料性の高さとか、その他の側面については、まだまだ私の判断のできるようなことではない。しかしはっきりいえるのは、その視点である。自らがどこにいて、どちらに視点を向けているのか、ということで、島田と村上は、まったく180度ちがった方向性を向いていると言ってもいだろう。

 「往相」(おうそう)と「還相」(げんそう)という言葉を、私が聴いたのは、一農夫にすぎない母方の祖父からだった。彼は、若い時から地方の小さな禅寺に参禅し、禅語も愛する一人の老人に過ぎなかった。彼からダルマや慧可の話なども聞いた。いろいろ聴いたなかで、この二つの言葉が、なんの脈絡もなく、やたらと私の頭に残っているのは不思議なことだ。私は、この言葉の意味を、とくに第三者に確かめたことはない。私の解釈は正しいかどうかもわからない。

 の解釈によれば、往相とは、シッダルダが人生の謎の解明を求め、城を脱出して森へと「往く」相(すがた)である。まだ、悟ってはいないが、その真理を求めようとするその姿そのものが、すでにブッタである。なくてはならない人生の一面である。しかし、それは反面でしかない。

 シッダルタは悟りを得てブッタとなった。そのまま宇宙の存在に消えようとしていた。それはそれで美しい。それ以上、人間として何ができることがあるか。ほとんどブッタとしてのシッダルタはその道を歩もうとしていた。それは誰にも非難されることでもない。だが、彼は、彼の道を選んだ。彼は、森を出、かつてやってきた道を戻り始めた。そして、かつての家臣でもあり瞑想の仲間達のところへと戻り、自らの得た体験を話し、ひいては村や町にもどって、迷える衆生たちの中で暮らした。ブッタはここでブッタとなった。ここにゴータマ・シッタルダ=ブッタのお話の美しさがある。

 私は、往相だけでは半面であるとか、還相が不可欠であるとか、強論する気はない。ただ、この二つがあってこその円環の美を見る。私には、島田の視点は「往相」にあると思う。そして、村上のそれは「還相」にあると思う。島田は、麻原集団を簡単には「カルト」と切り捨てることをよしとはしない。シッダルタが、妻と幼き子どもラーフラを置き去りしてまで「真理」を求めようとした姿を倫理的に問い詰めることは簡単だ。
「ブッダは、なぜ子を捨てたか 」という本もある。だが、島田はそれらの倫理や情やヒューマニズムを理解しつつ、出家者としての麻原集団の「往相」を理解しようと努める。

 たや村上は、出家者たちのことなど眼中にはない。ひたすら市井の市民達。通常の社会の生活者達に目を向ける。まさにあの事件がなかったら、ひとくくりにして語られることはなかったであろう
人々。そして村上自身もあの事件がなかったら、会うことも、小説として書くこともなかっただろう人々について書き出す。そしてひとりひとりにインタビューをしながら、村上本人が書こうとしているのは、ひとりひとりの人間像ではない。もちろん、単純な事件の構図でもなければ、麻原集団憎しの感情論でもない。村上は、現代社会を必ずしも肯定的にはとらえていない。むしろ批判的に現代社会を切り取ってみせることだってある。

 この「アンダーグラウンド」において、村上は「還相」を書こうとしている。単純な感情論を廃しながらも、ある真理の半面。あたりまえに生きることの大切さ。通常の社会の、別な面。まだ4分の1しか読んでいない段階で、そう評価してしまうのは早計だろう。ただ、私の読書としては、そういう位置づけで読んでいくことになるのだろう。

つづく





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Last updated  2009.03.31 13:12:43
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