カテゴリ:名作の散歩道
春の雨のような色《つるにちにち草の淡青色》の目の、ヴァンカという名の少女はほっそりした十五歳半。
少年は十六歳半。避暑に来るたびにたくましさを増して成長するフィリップという。 子供の頃からの仲良しなのに、なんだか気持ちがしっくりしない夏がやってきた。 ふきげん、尊大な態度、言い合い。いらだたしい恋。 そこへ美しい年上の女性、白衣の婦人、ダルレイ夫人が登場。少年は手ほどきを受けて…。 通俗的、不純、絵に描いたような避暑地の出来事みたいなんだけれど、コレットの感性はゆたかで、みずみずしくうつくしい文章となる。 わたしは堀口大学訳を18歳の時読み、忘れがたく思ったのだが、今回手塚伸一訳(集英社文庫)を再読した感想は、よりういういしさがいとしく、味わい深かく魅了された。 なるほどコレットが分別盛りの50代に書いたのだから、そうなのだと思うし、また恋愛の情熱には年齢がないというテーマなのだから、コレットの筆力がすごいということ。 少女のこころの大人っぽさと、少年のからだばかりは成長しても、不器用でぎこちないこころとのぶつかり合いの果てには何が…何処へ行くのか。せつない。 やっぱり若い複雑なこころの「恋愛の妙」に惹かれてしまう、名作。 でも、恋愛の本場フランスであってもスキャンダラスな作品との評が当時(1923年)あったのだそう。ふーうん。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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私の子ども時代に話題になった映画でした。
10年ほど前にビデオで鑑賞しましたが、そのついで?に文庫本を買って読みもしました。 「期待」の種類が違っていたのか?あまり文章には感銘しませんでしたし、よく覚えていません。 (やっぱり、私はフランス系の小説はだめです) その割に、仏文出身者(開高健など)の視覚的なエッセイは大好きなんですが。 映画では、このダルレイ夫人が単に優雅な有閑夫人ではなく、パリではあまり教養のない男の愛人であって、彼女はその状況に不満を持っている。 それが少年との関係の動機の伏線になっている様な気がしました。 映画での夫人・少年・少女ともいかにもフランス人的な容貌でした。 (2007年10月02日 18時03分49秒)
>あまり文章には感銘しませんでしたし、よく覚えていません。
フランス語がわかれば素晴らしいのかもしれません。わたしも知らないので日本語の訳で想像しました。本職訳者が訳しにくい語感の文章だそうですから(笑) わたしが感銘したのはそのものずばりの表現ではなくても(直接描写)よくわかる青春の悩み(少年の)でした。 ダルレイ夫人の動機はalexさんのおっしゃるとおりと思います。それが奥深いですね、現実の「事件」とされるものも案外そんな動機がありますでしょうね。 (2007年10月02日 19時21分09秒) |
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