春の雨のような色《つるにちにち草の淡青色》の目の、ヴァンカという名の少女はほっそりした十五歳半。
少年は十六歳半。避暑に来るたびにたくましさを増して成長するフィリップという。
子供の頃からの仲良しなのに、なんだか気持ちがしっくりしない夏がやってきた。
ふきげん、尊大な態度、言い合い。いらだたしい恋。
そこへ美しい年上の女性、白衣の婦人、ダルレイ夫人が登場。少年は手ほどきを受けて…。
通俗的、不純、絵に描いたような避暑地の出来事みたいなんだけれど、
コレットの感性はゆたかで、みずみずしくうつくしい文章となる。
わたしは堀口大学訳を18歳の時読み、忘れがたく思ったのだが、今回手塚伸一訳(集英社文庫)を再読した感想は、よりういういしさがいとしく、味わい深かく魅了された。
なるほどコレットが分別盛りの50代に書いたのだから、そうなのだと思うし、また恋愛の情熱には年齢がないというテーマなのだから、コレットの筆力がすごいということ。
少女のこころの大人っぽさと、少年のからだばかりは成長しても、不器用でぎこちないこころとのぶつかり合いの果てには何が…何処へ行くのか。せつない。
やっぱり若い複雑なこころの「恋愛の妙」に惹かれてしまう、名作。
でも、恋愛の本場フランスであってもスキャンダラスな作品との評が当時(1923年)あったのだそう。ふーうん。