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「厭だ」 から始まる短編連作が七話。 子供、老人、扉、先祖、彼女、家、小説。 全編を貫くのは、厭な上司亀井と部下の深谷。 筒井康隆の短編に酷似している。が、さほどハチャメチャではない。 改行多くて、会話文も短く、2行に渡る文はほとんどない。 厚みのある割には、あっという間に読める。 分厚いけれど、驚くほど軽い。ハードカバーのペーパーバック紙。 いや~な感じの話ばかりなのに、すいすい読まされてしまう。 理不尽で、不幸で、酷く、辛く、気味悪いのに止められないのは、 どこかしら滑稽で可笑しみがあるからか、単にのぞき趣味か。 でてくる「厭」は意外と共感部分多い。誰もが厭と思うはず。 「厭」の字は、「嫌」の数倍イヤなカンジがする。 汚いよりも穢い、死体よりも屍体がよりディープな空気を醸すような。 過る、滾る、首肯く、剰つ、熟す(こなす)・・・いかにも京極さん。 こういった漢字遣いの文章は嫌いでない、むしろ好き。 それ相応の手練の文章でないと、そぐわないのがミソ。 性悪ジジイが書いたようなひきつった筆字のタイトル、背表紙読めない。 煮染めたような茶色でまとめた装丁に破れ偽装で、古本風。 ページの周りはホコリと湿気がにじんだかのような鼠色ボカシ。 細部にこだわる京極スタイルは一見一読の価値あり。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.08.04 23:46:11
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