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カテゴリ:歌舞伎・古典、観劇
コクーン歌舞伎で、第一回目に上演されたのがこの南番。
『東海道四谷怪談』でも、南番に盛り込まれていない「三角屋敷・小仏小平内」の話を織り込んだのが北番です。 まず南番から観ました。 新たに串田和美が演出。勘三郎が、直助、お岩など、その場面ごとに主要な人物を演じるので、早変わりも見所の一つとなっています。 怪談話なので、お岩が騙されているとも知らずに形相の変わる薬を飲み、櫛ですく髪がごっそりと抜け落ちる場面は見た目には恐ろしいのです。 しかし、勘三郎のお岩は美人でもなく、普段から夫の伊右衛門から子供を産んだことを疎んじられ、それでも自由のきかない体で子供を思いやる姿は、一層その様を哀れに映し、お岩の心中を察すると胸が痛みます。 自分の利益しか考えない夫・伊右衛門を橋之助が憎々しげに演じており、その非情さがかえって哀しさと怖さを倍増させるのです。 いつしか観客もお岩と一緒に、彼女を陥れた人物を呪っているようでした。 ただ、南番には救いがあります。大掛かりな川のセットは、水しぶきが観客に飛ぶことを前提としたダイナミックな演出で、演じ手も観客もスカッとした感じがあります。まるでお払いを受けたような気分でした。 そして北番。本邦初公開の作品。 休憩前まで(お岩が騙され、死に追いやられ、伊右衛門の周囲の人々を呪い殺し始めたところ)は、南番と同じ話です。しかし、お岩と伊右衛門以外は演じる役者が違います。南と北を両方観る観客へのサービスでしょうか。 歌舞伎の役者のレパートリーの広さ、演じる役の多さには頭が下がります。 その北番は、一味違います。 本当に寂しく、哀しく終わるので、この気持ちをどこにぶつけようか・・・。 これこそ怪談。最後は地獄を見る思いでした。 シアターコクーン前には出演役者のノボリが出て、情緒をかもし出していました。 作・四世鶴屋南北、演出・美術・串田和美 (シアターコクーンにて) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006.04.17 01:13:23
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