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カテゴリ:歌舞伎・古典、観劇
東京は今、蜷川&シェイクスピアの世界に包まれています!
さてこちらの作品は、博多座での公演を終え、ようやく歌舞伎座にやってきました。 『NINAGAWA十二夜』2005年の再演です。 初演時よりもダイナミックに、そしてより洗練されたものとして姿を現しました。 そしてなにより、菊之助の芸に厚みが感じられたことが、観客として嬉しい限りです。 この作品は、シェイクスピアの「十二夜」を原作として、舞台を日本の歌舞伎の世界に置き換えたものです。 乗っていた船が難破し、互いの生死もわからないまま別れた双子の兄妹(菊之助の二役)。 妹の琵琶姫は、生きて浜に漂着したものの、行くあてもなく、その地の大篠左大臣(錦之助)に仕えるため、男姿の小姓に変装して、獅子丸と名乗ることにします。 そして琵琶姫=獅子丸は、大篠左大臣を一目で恋してしまいました。 そんな事情を知るはずもなく、大篠左大臣は、織笛姫(時蔵)へ自分の想いを伝える使者として獅子丸を遣わすのです。 一方、織笛姫は獅子丸を見た途端、その優しい姿に恋してしまいます。 そして迎えた終盤には、無事だった兄の斯波主膳之助(菊之助)が偶然、織笛姫の屋敷を訪れて・・・。 一目ぼれと片思いと思い違いと策略とがないまぜになった喜劇です。登場人物が皆、必死なのがこの作品の楽しいところ。 双子の兄妹の、一つの顔や声、そして二つの体は鏡に映ったよう・・・と象徴する舞台装置は全て鏡張り。 口うるさい執事役の丸尾坊太夫(菊五郎)をぎゃふんと言わせようと目論む腰元麻阿(亀治郎)など、彼らが物陰から伺う様子も、その姿が鏡を通して観客に知れるところとなり、幾重もの面白さを含んだ舞台です。 ここでは、男女二役を演じる菊之助について述べましょう。 男女の違い以上に、見かけは男でも実は女という外見の変装とは裏腹な女心、時には素に戻るそんな微妙なさじ加減を武器に、琵琶姫、いえ、獅子丸を魅力的に演じていました。 筋書きの彼の言葉を借りて言うと、「ボリュームのつまみを回すような」加減で、獅子丸がふと見せる女の素顔との行き来が、見所の一つになりました。 歩き方をとっても、琵琶姫扮する獅子丸がスタスタと歩く様、一方兄の斯波主膳之助が男として堂々と歩く様、観る者だけに直感的に思わせるこの違いには感心してしまいます。 歌舞伎が現代の様式と融合している、そんな世界。百聞は一見にしかず、です。 演出・蜷川幸雄、作・W・シェイクスピア、訳・小田島雄志、脚本・今井豊茂、装置・金井勇一郎、照明・原田保 (歌舞伎座にて) ※公演詳細はこちらの公式サイトで。 ☆作・W・シェイクスピア、訳・小田島雄志「十二夜」白水Uブックス ☆著者・長谷部浩「菊五郎の色気」文春新書 著者が『NINAGAWA十二夜』のプロダクションに関わっていたそうで、巻末にこの作品(初演)について想いのこもった記述があります。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007.07.11 22:58:17
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