思い出話
生き物と生活していれば 何時か来る分かれの日・・私が先に逝かない限りは 後少なくとも10回の別れを通らなければならない最初の別れはチーだったこの犬には全精力を傾けてできる限りの事を何でもした常に一緒だった彼の生涯で私と共にいなかった日は30日とはないだろう何をするのも一緒留守番をさせてその間に何かあったら・・・だから必ず誰かが彼の為に共に留守番をする事になる自慢じゃないが重度の心臓弁膜症を抱えた犬だった今から40年近く前のことで 症例も 医療も何もかもが少ない情報の中での暮らしだったコイツが死んだら一緒に死んじゃおうか・・剥製にして一生大切に持っていて 私の棺に入れてもらおうか・・そのくらい思い入れのあった犬だったある時 のっぴきならない用事で出かける事になって 急遽弟に散歩を頼んだ当時学生だった弟に 『チーの首に鍵を下げていくので外して部屋に入ってくれ』と依頼し チーを外通路のケージに入れて出かけたところが仕事の予定が切り上がり 早く終わって夫が帰宅した・・・私は家に居るものと思ったが留守なのでチーから鍵を貰おうとしたのだが 取らせてくれないそう・・ 私は 『○(弟)ちゃんにしか渡しちゃダメよ』と言って出かけたのだそうこうしている間に 弟が来たチーは首を差し出し鍵はここだよと・・ 弟は難なく鍵を外す事が出来たまた ある時 知人がテレビ出演していたチーをこよなく可愛がってくれ よく散歩にも一緒に入ってくれていたので 声を聞いたとたん探し始めたテレビの周りをグルグルグルグル・・『チー おやかんの中は?』なんてふざけてみたやかんの蓋を開けて 『いないよ いるわけないじゃん』てな顔をして付き合ってくれた子育ての最中も ミルクを二階に運び子供に飲ませる妊娠中 暇に任せて訓練した大成功だった飲み終わるとちゃんと持って来るこんな便利な奴と絶対別れたくない・・しかし命には終わりが来る自分が初めて飼った犬だったから余計に思い入れが強いのかチーだったからなのか・・今になってもわからないまだまだ自分では普通の事だと思っていた事が 他人から見れば犬とは思えない事だったりしたチーと暮した日々の何倍かが流れていくチーを知る誰もが言うあんな犬は他にはいない きっと前世は人間だったんだよ・・・近所の人達がチーに声をかけてくれるときは まるで人間に声をかけているようなのであるそれはまるで申し合わせたかのようであった不思議な犬だった私の役目は 10の命を見送る事そしたら チー また一緒に暮そうね