********* X'mas 企画 15 days of Christmas in 花園 ******
サンタクさんの贈り物 第10夜 ドメスティックセクハラ
口うるさい奥さんのほかに、王家にはもう一つ問題があった。ここ数ヶ月、王家の主人のリンホンに対する態度がおかしいのだ。
それは、リンホンの週に一回の休日のある日曜日に始まった。普段、リンホンは、休みの日は外出をして一日過ごす。その日は出かける前に髪を洗った。朝の9時過ぎ、使ったタオルを洗濯場の端っこに干すために台所を横切ろうとすると、ちょうど旦那さんが入ってきた。
旦那さんは、ぬれた髪をたらしているリンホンをじろじろ見て、
「寒くなってきたから、髪がぬれていると風邪を引くよ。冷えるからね。」
と、言った。リンホンは、あまり家にいない旦那さんとほとんど話をしたことがなかったので、緊張してしまい、黙ってしまった。すると旦那さんが一歩前に出て、リンホンの濡れ髪に手を伸ばした。旦那さんの手が肩にかかるリンホンの濡れ髪に触れ、リンホンの肩にも触れた。
リンホンがびっくりして立ちすくんでいると、旦那さんは何も言わずに台所から出て行き、ドライヤーを持って帰ってきた。
「これを使いなさい、私が乾かしてあげようか?」
と、また手を伸ばしてリンホンの髪を一束持ち上げる。
「とんでもないです。ありがとうございます。でも、私、いりませんから。」
リンホンは、しどろもどろになってそれだけいうと、台所から物干し場に飛び出した。
物干し場で、必要以上に時間をかけてタオルを干し、置いてあったバケツにかけてあった雑巾をもって、庭からガレージに回り、自分の自転車と王家の子どもたちの自転車を拭いた。そして恐る恐る台所にもどると、もう旦那さんの姿はなかった。
台所のカウンターの片隅にドライヤーが置いてある。確か、前に奥さんが使っていたものだ。最近、日本製の軽くて小さいのに買い換えたので、これは誰も使っていない。しかし、こんなところに出しっぱなしにしては、私が勝手に持ち出したと思われる。奥さんはまだ寝ているので、収納場所の寝室の奥のバスルームには入れない。どうしよう。
リンホンは仕方なく、奥さんの寝室のドアノブにドライヤーをそっとかけ、そのまま外出した。夜、帰ってみるとそれはなくなっていて、誰もそのことについては何も言わなかった。
その日以来、旦那さんのリンホンを見る目が変わった。あいかわらず、留守がちで、毎日顔を合わせることはなかったが、台所で働いているリンホンが、ふと視線を感じたほうを見ると、ダイニングからこっちを見ている旦那さんと目が合った。来客にお茶を出したら、客にじろじろ見られ、下がっていくリンホンの後からは、何やら旦那さんの笑いの混じりのひそひそ声が聞こえたこともあった。
つい最近では、二度ほど、手を握られた。というか、手を触られたこともある。あの、粘りつくような視線、下卑た笑い声、たばこ臭い指、それらはリンホンにとって気味悪く、奥さんの叱責よりずっと恐ろしかった。
(つづく…)
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