******* X'mas企画 15 days of Christmas in 花園 **********
サンタクさんの贈り物 第11夜 突然の解雇
きつい奥さんに、いやらしい旦那さん、この先王家でどうやっていこうかとリンホンの悩みは募っていった。しかし、ことはあっけなく終結した。
解雇。Q市に来て1年と3ヶ月目のことである。奥さんに怒られることが、ちょっと減ってきたと思った矢先、奥さんに呼びつけられて告げられた。半月後に引っ越すから、仕事もそれで終わり、と。
リンホンに落ち度があったわけではない。王家が家族を上げてオーストラリアに引っ越すことになったのだ。実業家のご主人が、投資をして移民の権利を獲得したらしい。将来は、C国とあちらを行ったり来たりするつもりらしいが、とりあえずは引っ越して、居住の事実を作る必要があるので、Q市を引き払う。
しかし、そんな大事が昨日今日決まったわけではもちろんない。移住計画は、リンホンを雇う前から合ったらしい。長女を留学させたのも、その下準備だったようだ。リンホンは、仕事を失うことになって途方にくれるばかりだが、王家に勤めて4年になる料理番の家政婦も、引越しのことをまるで聞かされていなかったので憤慨し、急にリンホンの味方になった。
「もっと早く言ってくれれば良いのに。そしたら次の仕事のあたりをつけとくこともできたのに。4年も勤めたのに、どうしてこんなに差し迫るまで言ってくれなかったのかしら。」
リンホンが答えないでいると、料理番葉一人でしゃべり続けた。
「私は、こっちに家族もいて家もあるけど、あんたは出稼ぎだもんね。かわいそうに。田舎から出てきたあんたの首、急に切って、どうしろってのよねえ。あんたは、がんばってやったわよ。新しい家に来たんだもん、誰だってわけわかんないわよ。それをあんなに何でもかんでも厳しく言って…。あれは、引越しでイライラしてる奥さんの八つ当たりだったんだ。ほんと、この家の人たちってひどい。」
「……。」
あまりに突然のことで、リンホンには相槌を打つ気力もなかった。でも、これで旦那さんから逃げおおせることができる。もう、あの嫌な思いはしなくて良い。しかし、ほっとしている場合ではない。仕事がなくなってはQ市で暮らしていけない。仕送りもできなくなる。現実的な不安がこみ上げてきた。
(つづく…)
このままではマッチ売りの少女並みの悲しい話になってしまう。
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