カテゴリ:シリーズ京歩き
昔々、あるところに・・・。 という書き出しで始まるのが、昔話のお決まりのパターン。 しかし、京都に伝わる昔話や伝承というのは、 そういう時間や場所があいまいな話というのが、意外と少なくて、 逆に、もっと具体性を帯び、実在の人物が登場してくるようなものが多いというのが、 その特徴のひとつであります。 どのようなものがあるかと云えば、 ・大蜘蛛退治により、源頼光の熱病が治ったという話。 ・石仏を城に持ち帰った秀吉が、 石仏が元の場所に戻りたいと泣くために、それをそっと元に戻したという話。 ・千宗旦に化けた狐が、見事な手前を見せて、人々を驚かせたという話。 等々。 しかも、それらの話が伝わる場所には、 それにまつわる遺跡が残されていたりする場合も多くあります。 そこで、今回は、そうした京都に伝わる伝承のひとつ。 「忠盛灯籠」というお話を、ご紹介したいと思います。 この話に登場してくる人物はと云えば、白河法皇と平忠盛。 平忠盛というのは、ご存知のとおり、今年の大河ドラマにも登場してくる平清盛のお父さんですね。 そして、この伝承は、 平忠盛という人が、いかに思慮深く、判断力に優れた人であったかということが伝わってくる、 そんな逸話でもあります。 ( 忠盛灯籠 ) 平安末期の永久年間、ある雨の日の夜のこと。 白河法皇が、祇園女御に会いに行くために祇園・八坂神社のあたりを通りかかったところ、 前方の北の森に明かりがついて、怪しげな鬼のようなものが見えました。 法皇はお供についてきていた平忠盛に、この鬼のようなものを討ち取るようにと命じます。 しかし、忠盛は、法皇の命ながらも、これを討ち取ることはせず、 まず、その正体を見極めようと、これを生け捕りにしました。 すると、何とそれは、鬼などではなく、 八坂神社の社僧が灯籠に灯明を灯そうとしていたところで、 雨具の蓑が、灯明の光で銀色の針のように見えていたものなのでありました。 無用に人を殺すことなく、冷静に対処した忠盛のこの思慮深い行動に、 人々は、こぞって感嘆の声をあげたのだそうです。 その後、このことから、人々は、この灯籠のことを「忠盛灯籠」と呼ぶようになりました。 京都・八坂神社にある石灯籠のひとつ。 本当かどうかはわかりませんが、 この灯籠が、その時の灯籠であるといわれています。 しかし、いかにも古そうなこの灯籠には、 忠盛のこの伝承を、彷彿とさせるものがありますね。 この「忠盛灯籠」があるのは、八坂神社・本殿の東側。 今も、この灯籠は、悠久の歴史を刻むかのように、佇んでいます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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