舞鶴の海と町と
「海の日」が7月の第3月曜になったのは、平成15年からなのだそうですが、これにより7月に3連休がとれるようになって、この時期、遠出する機会というのが増えているように思います。そんな中、今年は、京都北方の町、舞鶴へと出かけてきました。この「海の日」の3連休化に伴い、国が推進している事業の一つが、「海フェスタ」というイベント。これは海についての認識を深め「海の日」本来の意義を再認識してもらおうという趣旨のもののようですが、毎年、この時期に、全国の主要港湾都市で実施されていて、第11回目となる今回は京都が開催地。舞鶴を中心とした7つの市町村が共催という形で「海フェスタ」の催しが実施されています。 海フェスタ京都PRポスターのひとつ。 舞鶴特産の万願寺とうがらしをモチーフにしたものです。その内容はといえば、様々な企画展示とともに、セミナーやシンポジウム歴史見学会や映画まつり、コンサート、花火大会など、帆船や海洋船の一般公開もあったりと、本当に盛りだくさんです。行って見ると、会場があまりに多くの人で賑わっていたのには驚きました。そうそう、グルメ対決のコーナーなんかもありましたよ。今回、舞鶴を訪ねたのは、特に「海フェスタ」が目的というわけではなかったのですが、魅力的なイベントがいっぱいで、これは、さぞ楽しいんだろうなと思いながら見ていました。でも、そうした「海フェスタ」の賑わいの中、舞鶴の歴史史跡をめぐることにします。舞鶴といえば、明治以来、軍港として発展してきた町。今も、海上自衛隊がその施設を引き継いでいて、艦隊活動の中心拠点のひとつともなっています。この舞鶴が軍港として発展していく、そのきっかけとなったのは明治34年(1901年)のこと。日本海側に、ぜひ軍事拠点を置きたいと検討を進めていた旧日本海軍は、その最適地として舞鶴を選び、ここに鎮守府という軍事拠点を設置しました。その初代長官には、東郷平八郎を任命。これは日露開戦の、およそ3年前のことであり、ここをロシアに対する戦略拠点として位置づけたいということだったのであろうと思われます。その後、舞鶴には兵器庫・砲台・造船所などの施設が次々と作られていくことになりました。舞鶴には、その当時の建物のいくつかが、今でもそのまま残されていて、中でも、元兵器庫であったレンガ造りの建物群は、特に有名です。平成20年には、そのうちの6棟が、国の重要文化財にも指定されています。さて、次に、海軍の町・舞鶴ならではの、見どころをご紹介しましょう。それは、海上自衛隊が所有している艦船の特別公開で、自衛隊桟橋と呼ばれている岸壁に停泊している軍用艦をすぐ近くで見る事ができ、また、その艦内を見せてもらうこともできるのです。見学をするには、自衛隊桟橋の受付に行って、住所・氏名・年齢などを記入し、許可証をもらうだけ。入場は無料です。岸壁に入っていくと、この日は、護衛艦「まつゆき」、護衛艦「みょうこう」、補給艦「ましゅう」の3隻が停泊していました。すぐ近くまでいくと、さすがにすごい迫力です。また、この日は、護衛艦「みょうこう」の艦内が公開されていました。タラップのような階段を登り艦内へと入っていきます。入っていくと、制服を着た自衛隊員の人が、大きな声のあいさつで出迎えてくれました。軍艦の中に入るのは生まれて初めての体験で、ちょっと緊張です。部屋の中には、もちろん入ることはできませんが、それでも、外から見るだけでその頑丈で精密なメカニックの塊りであることが察せられます。護衛艦というのは、現在の自衛隊における主力艦。その搭載されている兵器というのも、また、すごかったです。目標物を自動的に追跡する機能を持ったミサイル1分間に4500発を発射することができる機関砲潜水艦を攻撃するための魚雷などそれらの実物を、すぐ近くで見れたというのは、またとない機会であったと思います。ところで、舞鶴では、この自衛隊桟橋以外にも色々なところを訪ねました。舞鶴港内、海軍ゆかりの港めぐり。自衛官OBの人が、港内の色々な施設について説明をして下さいました。赤レンガ博物館。レンガを作る窯を再現したコーナーもあったりとか、レンガに特化したその展示内容は充実していました。海軍記念館。自衛隊の施設内にある展示棟。日本海軍の歴史や歴代将軍たちの遺品など、が展示されていました。さきにも、少し触れましたが、この舞鶴というところは、東郷平八郎が、日露戦争の海軍総司令長官として出征する前に過ごしていたという東郷平八郎ゆかりの町。この舞鶴の町の通りの名前というのも特徴的なもので、「三笠」「初瀬」「敷島」「朝日」など、日露戦争当時の主力艦の名前がつけられています。まさに、司馬遼太郎さん「坂の上の雲」の世界。私も、この愛読者だっただけに感慨深いものがあります。舞鶴というところは、明治期の、海軍の歴史を偲ぶには、とても味わい深く、また、レンガ造りに彩られたその町並みは、どこかエキゾチックで、すごく趣きのある町であると、訪ねてみて、そんなことを感じました。