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音楽雑記帳+ クラシック・ジャズ・吹奏楽

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bunakishike

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2024年04月24日
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カテゴリ:ジャズ

フィンランドのヘルシンキ出身のフランク・カールバーグの新譜を聴く。
例によってbandcampからの紹介で知ったアルバム。
彼は、いろいろなグループで活動を行い、ニューイングランド音楽院でも教えているそうだ。
彼は長年モンクの研究を行っていて、以前も「Monk Dreams, Hallucinations And Nightmares 」(1989)を発表し、ダウンビート誌で5つ星評価を得ている。
彼はモンクの大編成での演奏活動に注目し、研究していて、その成果がこの「Elegy for Thelonious」に反映されているそうだ。
全曲彼の作編曲だが、かなり実験色の濃いアルバムだ。
アルバムは『モンクの楽曲を再構築し、再解釈することで、モンクの音楽の普遍性と革新性を示している」とのこと。
モンクの音楽がストレートに出てくるわけではない。
なので、聴き手を選ぶアルバムだが、モンクの音楽を良く知っている聴き手には楽しめるアルバムだろう。
18人編成で、ヴォーカル(と語り)が二人加わっているのが珍しい。
クラリネット族の多用が目立ち、金管のワウワウミュートもなかなかユニーク。
タイトルチューンの「Elegy for Thelonious」はピューリッツァー賞を受賞しているアメリカの詩人ユセフ・コムニャカアの詩の一節をクリスティーネ・コレアが朗読している。
この言葉で検索するとヒットするのでご興味のある方は参照して頂きたい。
簡単にいうとモンクが亡くなった時の詩人の、幾分やけくそ気味になった心情風景を詠ったもののようだ。
モンクは1982年2月17日にアメリカのニュージャージー州で亡くなっている。
当時の凍てついた灰色の風景が見えるよう気分になる。
バス・クラリネットやクラリネットに先導されて曲が始まる。
トロンボーンのワウワウミュートのプレイが目立ち、モンクというよりはミンガスを思い起こさせるような混沌とした音楽。
モンクの「CrepuscuェWith Nellie」のメロディーが聞こえる。
途中から賛美歌「Abide With Me」(「Monk's Music」収録)が流れ、その後ジェノヴェーゼのシンセによる奇怪なソロが続く。
1曲目の「Spooky Rift We Pat」はスタンダードの「Tea for Two」とモンクの「Skippy」のアナグラムで、音楽もこの2曲が混然となっている。
この曲でも最初にインクリスティーネ・コレアの讃美歌のようなヴォーカルが入る。
テンポが上がると、下降音型のフレーズが何度も出てくるが、これがジェットコースターのような気分を味合わせてくれる。
「Out of Steam」はコミカルなリズムと複雑なハーモニーのイントロに始まり、ヴォーカルのゴスペルのような短いフレーズが、何度も出てくる。
このフレーズが陳腐で、おまけに奇怪なシンセの効果音が出て来て、あまり聞きたくない音楽になっているのが理解不能。
アルト・サックスのソロは素晴らしいが、バックのため台無しになってしまった。
ただ、狂気じみたエンディングは一聴の価値がある。
「Wanting More」は1960年に短期間モンク・バンドに参加していたサックスのスティーブ・レイシーに対してモンクがアドバイスした言葉をの一節だそうだ。参考
長くなるが、その部分を下に示す。
『Don’t play everything (or every time);
let some things go by.
Some music just imagined.
What you don’t play can be more important that what you do.
Always leave them wanting more.』
(訳)
全てを演奏する(またはいつも演奏する)必要はない;
何かを通り過ごしてみよう。
ある音楽は単に想像されるだけのもの。
演奏しないことが、演奏することよりも重要になることがある。
常に彼らにもっと欲しがらせておけ。

要するに、空間を音で埋めるのではなく、音と音の間を生かすことが重要だと言っている。
モンクのピアノ・スタイルそのものを表しているような言葉だ。
曲はタイトルから連想されるようなものではなく、ダークな雰囲気の中、トランペット・ソロが延々と続き、そこにいろいろな楽器が絡む。
70年代のマイルス・バンドのような雰囲気が感じられる。
後半リズムの反復が止むあたりから俄然盛り上がるが、それまでは単調。
「Scallop's Scallop」はモンクのオリジナル「Galop's Galop」に因んだ曲。
「Wanting More」と同じようなダークな空間にトランペット・ソロが響くフリーフォーム的で混沌とした音楽。
5分過ぎからのテュッティでの上昇グリッサンドが狂気じみた凄味を感じさせる。
「Wrinkle on Trinkle」は「Trinkle Tinkle」に因んだ曲だろう。
無機的な変拍子のリズムが圧倒的な迫力で迫ってきて、モンクの特異性を強調しているように感じられる。
最後の「Brake Tune」はモンクの「Brake's Sake」を再構築したもの。
原曲の楽し気は雰囲気はまるでなく、すっかり変容してしまっているが、カールバーグの編曲能力の凄さを、まざまざと感じることが出来る。
イントロからヘリー・パスのハーモニックス粗野なテナー・サックス・ソロが続く。
ソロの途中で入るバックの鋭い一撃が鮮烈だ。
その後の原曲の短いフレーズが執拗に繰り返される部分は、もはや狂気の世界だ。
後半に入るジェノヴェーゼの奇怪なシンセ・ソロは、入っている理由が分からない。
ということで、カールバーグの高度な作編曲能力、強固なアンサンブル、素晴らしいソロと3拍子揃った完成度の高いアルバム。
ただ、筆者を含め、聴き手にはハードルが高いと思われる。
録音はノイズのない、ビッグバンドらしい厚みとスケールを持ったサウンドが楽しめる。



Frank Carlberg:Elegy for Thelonious(SUNNYSIDE RECORDS SSC 1716)24bit 96kHz Flac

Frank Carlberg:

1.Spooky Rift We Pat
2.Out of Steam
3.Wanting More
4.Elegy for Thelonious
5. Scallop's Scallop
6.Wrinkle on Trinkle
7.Brake Tune

Frank Carlberg(cond,composer)
Sam Hoyt, John Carlson, David Adewumi, Kirk Knuffke(tp)
Brian Drye, Chris Washburne, Tyler Bonilla, Max Seigel(tb)
Nathan Reising, Jeremy Udden, Adam Tolker, Hery Paz, Andrew Hadro(woodwinds)
Leo Genovese(p,key)
Kim Cass(b)
Michael Sarin(ds)
Christine Correa(vo track 1, 3, 4)
Priya Carlberg(vo track 2, 3, 4)


All compositions and re-compositions by Frank Carlberg
Text on Wanting More by Thelonious Monk
Text on Elegy For Thelonious by Yusef Komunyakaa

Recorded at Big Orange Sheep, Brooklyn, on May 10th and 11th, 202





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Last updated  2024年04月24日 17時59分08秒
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