「さっきのは、男からか?」
「ええ。でも彼とはただのクラスメイトですから、嫉妬しないでくださいね。」
そう言うと瑞姫は椅子から立ち上がると、ベッドの端に腰掛けているルドルフの頬に唇を落とした。
「し、嫉妬なんかしたりしていないぞ!」
「ならどうして、拗ねたような顔をなさっているんですか?」
「う、煩いな!」
ルドルフは羞恥で顔を赤く染めると、瑞姫にそっぽを向いた。
「ルドルフ様はわたしの前ではそんなお顔をなさるんですね。ホーフブルクではいつも気難しいお顔をされていたのに。」
瑞姫はそう言うと、ルドルフにしなだれかかった。
「お前だと何だか気張らなくて済むからな。それよりも、昨夜はやり過ぎたからから身体の方は大丈夫か?」
ルドルフは瑞姫の下腹をそっと撫でながら言うと、彼女は頬を赤らめて俯いた。
「ええ。立ったままするなんて初めてだったから、少し膝が筋肉痛になってしまっただけで、後は大丈夫です。それに・・」
「それに?」
「余りにも気持ち良すぎて、もっとして欲しいとさえ・・」
そこまで瑞姫が言うと、ルドルフは悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「そんなに良かったか? まあわたしも、お前があんなに悦ぶ顔を見たことがなかったよ。」
「そ、そんな・・」
ルドルフはそっと瑞姫の髪を梳くと、彼女の唇を塞いだ。
「ミズキ、この際だから言うが、わたしはお前の元許婚に初めて会った時に、もうお前が他の男に抱かれているのではないかと思ってしまった。だからあんなに酷い事をしてしまって・・」
瑞姫の脳裡に、嫉妬に駆られたルドルフが自分を乱暴に抱いた日のことが浮かんだ。
「いいんです、もう済んだことですから。それよりもまだ身体が疼いてたまらないんです。」
そう言ってルドルフにしなだれかかった瑞姫は、帯紐を解き始めた。
「随分と積極的になったな。昔は添い寝することを嫌がっていたのに。」
「初めての時、余り痛くなかったからでしょうか。多分、あなたのリードが上手かったから・・」
瑞姫の言葉を聞いてルドルフは苦笑し、彼女の髪を梳いた。
2人の唇が触れ合おうとした時、ドアが静かに開いた。
「相変わらず仲がいいね、2人とも。」
涼やかな声が背後から響いて瑞姫が振り向くと、そこにはマイヤーリンクに居る筈の亜鷹が立っていた。
「亜鷹兄様、どうしてここに?」
「あの後、わたしはマイヤーリンクからこちらに戻ってきてね。きっとお前がルドルフと居ると思って。彼に少し話したいことがあるんだが、いいかな?」
「ええ、いいですけれど・・」
不安そうな表情を浮かべながら、瑞姫はそう言ってルドルフの手を握った。
何か大変な事が起きたのだろうか。
「大丈夫、今のところは平和だよ。ただ男同士で話すことがあるからね。」
そんな彼女の気持ちが解ったのか、亜鷹は瑞姫に微笑んで彼女を安心させた。
「そうですか・・」
「すぐ彼を返すよ。」
亜鷹はそう言うと、ルドルフを見た。
「で、わたしに話とは何だ?」
彼に中庭へと連れて来られたルドルフは、不機嫌そうな顔をして亜鷹を見た。
「あれから瑞姫には何か異変はないか?」
「肩の傷はもう完治したし、何も異変は見当たらない。」
「そうか。ではお前はどうだ? マイヤーリンクで瑞姫の血を飲んだだろう?」
「確かに飲んだが、別にどうということもない。」
ルドルフの言葉に、亜鷹は溜息を吐いた。
「瑞姫との子が欲しいか?」
「ああ。ミズキもそれを望んでいる。昨夜は激しく彼女と愛し合った。だがミズキは一度、わたしとの子を失っている。それと何か関係があるのか?」
「瑞姫が子を宿すことで彼女の内側に封じ込めていた妖力が解放され、完全体として覚醒めた彼女は自我を失ってしまう。」
「それは・・子どもを諦めろということか?」
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