ステファニーとクリストフ、ナターシャを乗せた馬車がエカテリーナ宮殿に着くと、そこには金の装飾品やクリスタルでできたシャンデリアなど、煌びやかな調度品で飾られた広間で踊る貴族達がいた。
「なんだか緊張してきました・・」
「大丈夫よ。」
ナターシャはそう言ってステファニーの手を握った。
ナターリアは気心の知れた友人達と雑談しながら、アレクセイの方を時折チラリと見ていた。
アレクセイは白い軍服を着込み、シャンデリアの光が輝く度に、彼のブロンドの髪がキラキラと輝く。
彼はあのクソ生意気な小娘-アレクサンドラと踊っていた。
名門の家に生まれたことを何かと鼻にかけ、欲しい物を手に入れてきた娘。
ナターリアと目が合うと、アレクセイの肩越しに勝ち誇った笑みを浮かべた。
(いつか痛い目に遭わせてやるわ。)
ナターリアがアレクサンドラを睨みつけていると、入り口の方が騒がしくなり、見てみると、アレクサンドラとそっくりな娘がボロヌスキー伯爵の1人息子・クリストフとともに入ってきた。
娘は頭に真珠とダイヤが散りばめられたティアラを載せ、真珠のネックレスを身につけたその姿は、一瞬どこかの国の皇女かとナターリアは思った。
娘は優雅に、皇帝陛下の元へと歩いていく。
無事ロシア皇帝・アレクサンドル2世への拝謁を終えたステファニーは、クリストフとワルツを踊った。
踊りの輪の中で、アレクサンドラがアレクセイと踊っているをステファニーは見た。
アレクサンドラと目が合うと、彼女はステファニーに向かって含み笑いをした。
その笑みが、妙にひっかかった。
踊りが終わり、ステファニーはアレクサンドラのいる方へと歩いていった。
「あら、お久しぶりね。こうして会ったのは、ホーフブルクの時以来ね。」
アレクサンドラはそう言ってニッコリとステファニーに笑った。
「お久しぶりね。」
「エドガーさんをここに連れてきてるわ。ほら、あそこ。」
ステファニーはアレクサンドラが指さす方向へと歩いていった。
一方エドガーは令嬢達に取り囲まれ、困っていた。
サンクトペデルブルクの宮廷で、令嬢達の噂話の話題に上っているのは、ルドルフ皇太子と江戸ガーのことだった。なので噂話で話題になっているエドガー本人が宮廷に現れて、令嬢達のテンションは一気に上がり、エドガーを逃がさぬように彼の周りを取り囲んだ。
「エドガー様、ウィンナ・ワルツを教えてくださいな。」
「エドガー様、是非わたくしのお茶会にいらして。お待ちしておりますわ。」
「あら、わたくしのお茶会の方が楽しくてよ。」
「エドガー様!」
令嬢達の誘いを断ろうとエドガーが口を開こうとしたとき、背後から声がして振り向くと、そこには息を切らしたステファニーが立っていた。
「エドガー様、お会いしたかった!!」
「ステファニーさん!!」
令嬢達が唖然とする中、ステファニーとエドガーは抱き合った。
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