クリスマスの朝、アレックスは猫の鳴き声で起きた。
「アレックス、メリークリスマス。」
「メリークリスマス。」
眠い目をこすりながらアレックスが起きると、そこには一匹の毛並みが美しいメインクーンの子猫が籠の中で鳴いていた。
「これ、どこで?」
「俺の親戚がブリーダーをしていてな。子猫が生まれたから、もらって欲しいと頼まれたんだ。」
「可愛い・・」
アレックスがそっと籠に近づくと、猫は嬉しそうに鳴いた。
「オス?」
「いや、メスだ。俺にはなついてる。」
「ふぅん、とんだ恋のライバルだよね。」
アレックスはそう言って笑うと、子猫を抱き上げた。
「名前はどうしよう・・」
「急ぐことはない。それよりもこいつにミルクをやろう。」
ウォルフは近くにあったバスケットの中から哺乳瓶を取り出すと、ゴム製の乳首を子猫に咥えさせた。
すると子猫は元気よくミルクを飲み始めた。
「ありがとう、ウォルフ。最高のクリスマスプレゼントだよ。」
「どういたしまして。」
その後ミルクを飲んだ子猫は、籠の中で丸くなって寝てしまった。
「お前の爺さんが猫嫌いじゃなかったらいいんだが・・」
「大丈夫だよ、おじいちゃんは猫好きなんだ。」
アレックスが子猫を撫でていると、この前浴室に乱入してきた女児が部屋に入ってきた。
「ニャーニャ、触らせて。」
「だめ、今ニャーニャはねんねしてるの。」
「いやぁ~、触りたい~!」
女児が愚図り始めると、それまですやすやと寝ていた猫が起きてしまった。
「ニャーニャ!」
女児は籠の中に居る子猫に手を伸ばそうとしたが、子猫は女児を威嚇して毛を逆立てて唸った。
「駄目だろう、ジェーン。またお姉ちゃんを困らせちゃ。」
ジェイクが慌てて部屋に入ると、ぐずる娘を抱き上げた。
「パパ、あたしもニャーニャ飼いたい!」
「駄目だろう、またわがまま言っちゃ!」
「ねぇウォルフ、前から気になってたんだけど、あの子は誰なの?」
「あいつはあの男の弟、ジェフの娘でジェーンっていうんだ。数年前に離婚して、ジェフはジェーンを連れてこの町に戻ってきた。」
「そう。どうして俺達の部屋に来るのかなぁ?」
「寂しいんだろう。父親が毎日仕事で忙しいから、あいつには構ってやる奴が誰も居ない。まぁ、気が向いたら俺が時々遊んでやってるが。」
「ふぅん、ウォルフって結構優しいところがあるんだね。」
「からかうな!」
ウォルフの顔がかぁっと赤くなったのを見て、アレックスは思わず笑ってしまった。
「何だ?」
「いつも近寄りがたい感じだけど、そんな風に笑うんだなって。」
「まぁな。それよりもこいつの名前、どうする?何なら俺がつけてやってもいいが。」
「そうだなぁ・・ルナっていうのはどう?」
「悪くないな。」
「宜しくね、ルナ。」
アレックスがそう言って子猫を撫でると、彼女は気持ちよさそうにゴロゴロと喉を鳴らした。
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