ラスプーチンに捕えられたエドガーは、彼らによってプラハから遠く離れた森に建つ城の地下室へと連れて行かれた。
そこには、数々の拷問道具が置かれており、棚の上には医療器具が並べてあった。
「さてと、先ずはあなたのその綺麗な目を潰してさしあげましょう。」
椅子に両手足を縛られたエドガーは、メスを片手に迫って来るラスプーチンを睨みつけた。
「わたしに何を聞きたいんだ?」
「彼女の居場所を教えなさい。」
「ステファニーさんが、何処に行ったのかは知らない。」
エドガーがそう言った瞬間、彼の太腿に激痛が走った。
「次は太腿だけでは済みませんよ?わざわざ動脈を外したことを感謝するのですね。」
目の前に居る獲物をどういたぶってやろうかという嗜虐的な光に満ちた勿忘草色の目を向けながら、ラスプーチンはそう言ってエドガーの顔を覗きこんだ。
「もう一度言いますよ、ステファニーの居場所を教えなさい。」
「どんなことがあろうと・・貴様には教えるか!」
「ほう、強情ですね。苛め甲斐があるというものです。」
ラスプーチンはクスクスと笑うと、血が滲みだした傷口に爪を立てた。
エドガーはこみあげてくる吐き気を堪える為、歯を食いしばった。
「申し訳ございません・・あと一歩のところで取り逃がしました。」
「よい。アリエルよ、お前は良くやってくれた。お前のお蔭で、あいつにとって一番大事な者を手に入れたのだからな。」
「あの男の人・・」
「あいつの婚約者だ。かつてこの俺と刃を交えたことがある男だったが、そんな事はもう奴の記憶から抹消されているようだ。」
「我が君、必ずネックレスを取り戻してみせます。」
「そう焦るな。アリエル、風呂に入れ。泥に塗れたままでは要らぬ病に臥せることになるぞ。」
「わかりました。」
そう言ったアリエルは、うっとりとした表情を浮かべていた。
「我が君。」
「グレゴリー、地下室の客人の様子はどうだった?」
「なかなかしぶといです。決して口を割ろうとしません。まぁ、わたしは余り彼を拷問したくありません。それよりも、例の実験に取りかからねば・・」
「そうだな。その為に、俺達は遥々このハンガリーへとやって来たのだ。」
レパードはそう言うと、杖を握り締めて椅子から立ち上がった。
「俺を実験場へと案内しろ。」
「わかりました。」
数分後、ラスプーチンはレパードを連れて、実験場へと向かった。
そこには世界中から集められたありとあらゆる動物が飼育されており、彼らの餌として、“ある薬”が与えられていた。
「実験の成果は?」
「芳しくありません。データーが不足していて・・」
「薬の量を増やしなさい。」
ラスプーチンはそう研究員に命令すると、動物が収容されている檻の前を通り過ぎ、ある檻の前で足を止めた。
そこには、日本人の少年が鎖で手足を繋がれ、垢まみれで檻の隅に蹲っていた。
「あいつは?」
「マサト=ヨシムラ・・セルフォード家に滞在していた日本人留学生です。」
「一体何を企んでいるのだ、グレゴリー?」
「それは、秘密です。」
ラスプーチンはニッコリとレパードに微笑むと、マサトの檻の前を通り過ぎた。
彼には、他の動物達に与えている物とは違う“餌”を与えてある。
その効果が現れるのは、そう遅くはない。
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
もっと見る