素材は
NEO HIMEISM 様からお借りしております。
一瞬、幻でも見ているのではないかとクリスティーネ達は思っていたが、今自分達の前に立っているのは紛れもなく王太后の幽霊そのものだった。
「王太后様、何かわたし達に伝えたい事があるのではないですか?」
クリスティーネがそう王太后に―王太后の幽霊に話しかけると、王太后は、静かにある場所を指した。
クリスティーネ達が、彼女が指し示した場所へと向かうと、そこは王家の宝物庫だった。
「ここに、何かがあるのですか?」
王太后は頷くと、煙のように消えていった。
「宝物庫の中に、王太后様がお伝えしたい物があるのかもしれないわね。」
「ですが、宝物庫の鍵は陛下しか持っていないのでは?」
「わたしが陛下に頼んでみるわ。もう戻りましょうか。」
「はい、お嬢様。」
帰宅したクリスティーネとスンヒは、宝物庫の存在が気になって一睡もできなかった。
「おはよう、クリスティーネ。酷い顔をしているわね。」
「えぇ、少し眠れなくて・・」
「夜更かしは身体に悪いわよ。」
「はい、お母様。」
朝食を食べた後、クリスティーネは宮廷に上がった。
「クリスティーネ、今日は早いね。」
「フィリス、おはよう。」
「クリスティーネ、王太后様の幽霊騒ぎを確めたんだってな?お前付きの侍女から聞いたぞ。」
「その事なんだけど・・」
クリスティーネはフィリスに、昨夜起きた出来事を話した。
「王家の宝物庫には、歴代の王族の私物や宝石類などが納められている。王太后様は、お前に何か伝えたいことがあるんだろうな。」
「わたしもそう思うわ。だから陛下に、宝物庫の鍵を開けて貰えるよう頼んでみるわ。」
クリスティーネはそう言うと、フェリペの私室へと向かった。
「クリスティーネ様、陛下がお待ちです。」
フェリペの私室に入ったクリスティーネは、フェリペが寝台から起き上がっている姿を久しぶりに見た。
「陛下、お身体の具合は大丈夫なのですか?」
「あぁ、侍医から貰った薬を止めたら体調がすっかり良くなった。」
「そうですか。陛下、本日は折り入って頼みたい事が・・」
「そなたの話は、フィリスから聞いておる。宝物庫の鍵はそなたに預けよう。」
「ありがとうございます。」
フェリペから宝物庫の鍵を受け取り、クリスティーネは宝物庫の中へと初めて足を踏み入れた。
そこには、歴代の王族が身に着けていたであろう煌びやかな宝石類などが納められていた。
その中に、赤い革表紙の日記帳が、本棚の中にポツンと置かれていた。
クリスティーネが日記帳を開くと、そこには数ページ分破られた箇所があった。
(もしかして、これが王妃様の日記帳なの?)
クリスティーネがそう思いながら日記帳を見ていると、入口の方から誰かの足音が聞こえてきた。
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