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コチラからお借りいたしました。
「薔薇王の葬列」二次創作小説です。
作者様・出版者様とは関係ありません。
二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。
「一体何なのです、あの黒雲は!?」
「それが・・あの黒雲は、亡くなったあの御方が呼んだのではないかと・・」
「何を馬鹿な事を!」
「弘徽殿女御様、落ち着いて下さいませ!」
「あの女、死してもなお妾を苦しめるつもりか!」
「お言葉でございますが女御様、わたくしに考えがございます。」
「そなたは?」
「エリザベス、と申します。」
「エリザベスとやら、そなたの話を聞こうか?」
「実は・・」
エリザベスは、弘徽殿女御の耳元に、ある事を囁いた。
「それは、確かなのか?」
「はい。」
(これで、わたしの敵は居なくなる!)
「帝のご容態は・・」
「今は落ち着いておられますが、主上が危険な状態に陥られるのは時間の問題です。」
「そうか・・」
「主上は、うわごとでリチャード様を呼んでおられます。」
「リチャードを呼べ。」
「父上、どうされたのですか?わざわざわたしをお呼びになられるなんて、お珍しい。」
「主上が、お前を呼んでいるらしい。一度、主上に会いに行ってやれ。」
「ですが、わたしは・・」
「決めるのは、お前だ。」
リチャードはヘンリーに会いに、ケイツビーを連れて彼の元へと向かった。
「まぁ、あんなに空が黒くなって・・」
「呪われているのではなくて?」
「噂に聞いたところによると、あの御方の呪いかもしれぬと・・」
「まぁ、恐ろしい・・」
清涼殿の廊下を女房装束姿のリチャードが歩いていると、自分と擦れ違った女房達の話を聞いてリチャードは顔を曇らせた。
「リチャード様・・」
「ケイツビー、何か俺に隠している事はあるか?」
「いいえ、ありません。」
「そうか、ならばいい。」
二人がヘンリーの寝所へと向かおうとした時、渡殿の向こうからエリザベスがやって来た。
「あら、来たのね。」
「義姉上・・」
「主上の寝所には、わたくしの主である弘徽殿女御様がいらっしゃるから、あなたは行かない方がいいわよ。」
「ご忠告どうもありがとうございます。行くぞ、ケイツビー。」
(相変わらず、生意気ね・・まぁ、それもいいけど。)
「主上、あの者が・・」
「妾が会おう。」
苦しそうに咳込んでいるヘンリーの手をそっと握った後、弘徽殿女御は彼の寝所へ入ろうとするリチャードを阻んだ。
「主上に会わせる訳にはいかぬ。」
「何故です?」
「そなたが、あの御方を呼んだのでしょう?」
「女御様、一体何をおっしゃって・・」
「とぼけても無駄よ・・お前は、この国に災いを齎しに来たのだろう?周りの者は騙せても、妾に騙されぬぞ!」
一瞬、弘徽殿女御の顔が、幼い自分を罵った時の母の顔に重なって見えた。
“お前は全ての者を不幸にする!”
「ここから去ね!」
「せめて主上に会わせて下さいませ!」
「くどい!」
弘徽殿女御はそう叫ぶと、リチャードを突き飛ばした。
リチャードは、土砂降りの雨の中、放り出された。
「リチャード様!」
「俺は大丈夫だ、もう行こう。」
「嫌だわ、また雨が降って来たわ。」
「天候ばかりはどうにもなりませんわ、ベス様。」
「それにしても伯父様はどちらへ?」
「それはわかりません。」
「早く帰って来てくれないかしら。一人だと退屈だわ。」
ベスは、そう言うと御簾の向こうで吹き荒れる雨風を見て溜息を吐いた。
「リチャード、助けて・・」
「主上、気が付かれましたか?」
「リチャードは何処に居るの?」
「もうあの者と会う事はなりませぬ。あの者は・・」
ヘンリーは、激しく咳込むと、再び意識を失った。
「リチャード様大変です、主上が・・」
「行くぞ、ケイツビー!」
リチャードがヘンリーの寝所へと向かうと、彼は苦しそうに息を吐いた。
「ヘンリー!」
「リチャード、やっと来てくれた・・」
ヘンリーはそう言ってリチャードに優しく微笑むと、静かに息を引き取った。
「嘘だ!」
「何をしておる、早うこの者を追い出さぬか!」
「ヘンリー、目を開けろ!」
「リチャード様、落ち着いて下さい!」
半狂乱となったリチャードを落ち着かせようとしたケイツビーは、空に白銀と紅色の稲光が浮かんでいる事に気づいた。
「きゃぁぁ~!」
雷鳴が轟き、その雷はリチャードをヘンリーから引き剥がそうとしていた衛士の一人に直撃した。
肉が焦げるような嫌な臭いがあたりに漂い、女房達は悲鳴を上げて逃げ惑った。
「怯むな、あの鬼を捕えよ!」
「リチャード様・・」
鬼の姿へと変化したリチャードは、金色の瞳で自分を睨みつけた。
その額には、以前見た梵字は浮かんでいなかった。
(一体、これは・・)
「射て、射て!」
衛士達はリチャードに向けて矢を放ったが、それらは全て弾き飛ばされた。
「一体、どうなっている!?」
「化物!」
リチャードは衛士達に石を投げられ、全身傷だらけになりながら、闇の中へと消えていった。
「先程、宮中で鬼騒ぎがあったとか・・」
「はい・・」
「ほぅ・・」
バッキンガムは、嵐が止むのを待って鬼騒ぎがあった弘徽殿へと向かった。
「まぁ、バッキンガム様・・わざわざこちらにいらっしゃるなんて・・」
「リチャード様はどちらに?」
「それが、昨夜から行方知れずなのです。」
「何だと!?」
「何でも、弘徽殿に雷を落としたそうです。」
(一体、あいつは・・リチャードは何処へ消えたんだ?)
バッキンガムは、一人の女房と目が合った。
「あ・・」
「待て、お前何か知っているな?」
「わたくしは・・」
「知っている事だけを話せ。」
バッキンガムに迫られ、彼女は昨夜の事を話し始めた。
「そんな事が・・」
「あぁ、主上がおかくれあそばしたばかりだというのに、これからどうなってしまうのかしら?」
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